テクノロジーは本来、マーケティングと相性がいい。古くは、電話の登場でアウトバウンド型のテレセールスが可能になり、ファクスの登場で24時間の受注受け付けが可能になった。

 そしてインターネットの登場により、ネット通販が台頭し始めた。Googleの登場は消費者の知りたいことが検索キーワードとして明らかになり、企業が伝えたいことをキーワードでつなげるきっかけを作り、広告モデルを進化させた。

 さらにブログやFacebook、Twitterなどのソーシャルメディアの登場で、今までは情報の受け手だった消費者が、情報の発信側に回った。これにより、情報の発信者だった企業側が、今度は聞き手にもなった。結果、マーケティングは大きなパラダイムシフトが起きている。

 “1”である企業が“n”である顧客にワン・トゥ・ワン・マーケティングを実施するのは非常に手間がかかる。実現にはテクノロジーの活用が避けて通れない。さらに“n”の顧客の発言や動向を、“1”である企業が把握し、“n”の顧客に適切に返していくのは、テクノロジーを活用する以外には手立てがない。

 マーケティングに携わる人で、テクノロジーを受け入れない人が一部に存在する。だがマーケティングにテクノロジーは不可欠なところまで既に時代は来ている。

 どんなに控えめに見ても、小さなPD(CA)∞サイクルを実行する際に、ビッグデータが有益であることは否めない。ここでのビッグデータとはデータだけでなく、それを支える周辺のテクノロジーも踏まえての表現だ。

 少し話は脱線するが、ビッグデータについて簡単に触れよう。

 そもそもビッグデータとは何か。米ガートナーのマーブ・エイドリアン氏は「一般的に使われているハード環境とソフトツールでは、ユーザー層が許容できる時間内にキャプチャー、管理、処理できないデータ」であると述べている。

 また、米マッキンゼーグローバルインスティテュートの論文には「ビッグデータとは典型的なデータベースソフトのキャプチャー、格納、管理、分析能力を超えるサイズを持つデータセットのこと」と記載されている。

 このように、どちらもデータサイズの話をしている。一方で、私の出身母体であるIBMの定義は分かりやすい。簡単に言うと「大きい」「速い」「ややこしい」の3つのVがそろったデータがビッグデータであると述べている(注意:現在IBMは「4V」と言い換えている。個人的には以前の3Vが気に入っているので3Vで説明する)。

 3Vとは、このようなものだ。

・大きい:容量(Volume)。ビッグデータの特徴は容量の巨大さ。社内外にデータがあふれており、数テラバイトから数ペタバイトに及ぶ

・速い:頻度・スピード(Velocity)。今この瞬間にも、ものすごい頻度でICタグやセンサーからデータが生成されている。変化の著しい市場環境では、これらのデータにリアルタイムに対応することが求められる

・ややこしい:種類 (Variety)。ビッグデータは企業システムで通常扱う構造化データとは限らない。テキストや音声、ビデオ、クリックストリーム、ログファイルなど、様々な種類の非構造化データも存在する。これらのデータをビジネスに活用する動きが世界中で広がっている

 この3Vを踏まえ、一般的にビッグデータとは「大きくて、速くて、ややこしい」データであると思っていただいていい。もちろん、大きくて、速くて、ややこしいから意味があるわけではない。所詮データはデータであり、データをどのように活用していくかが価値の源泉になる。

 マーケティング領域でいえば、大きくて、速くて、ややこしいデータであっても、容易に高速に処理できるほどにテクノロジーが追いついてきたことに意味がある。つまり、小さなPD(CA)∞サイクルをタイムリーに回すことが可能なくらいに、テクノロジーが進歩したのが本質である。