Cerevo CEOの岩佐琢磨氏
写真1●Cerevo CEOの岩佐琢磨氏

 2013年4月28日、幕張メッセで開催されたイベント「ニコニコ超会議2」内で実施された「ハードウエアベンチャー」シンポジウムで熱弁をふるったCerevo CEOの岩佐琢磨氏(写真1関連記事)。同氏はそのときCerevoを起業した背景を次のように説明していた。

 「『最近日本の家電業界、メーカーは元気ないよね』と言われるが、日本は世界で一番家電の開発や販売をすることにたけた人が集まっている国。米国、韓国にも負けていない。このリソースは最強。だから僕らは日本でハードウエアを作って世界に売っていこうという会社を始めた」

写真2●Cerevoが開発・販売する製品
写真2●Cerevoが開発・販売する製品
写真左から「LiveShell PRO」「SmartTrigger」「LiveShell」
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 岩佐氏が2007年に起業したCerevoは、PC不要でニコニコ生放送やUstreamなどに映像を配信できるハードウエア「LiveShell」(写真2)などを開発・販売する家電メーカーである。現在、前述の言葉通り「世界に売っていく」ことを実現。既に世界17カ国にまでLiveShellの販路を広げている。従業員はパートタイムで勤務する方もいるため“約10人”。まさに小さな世界企業だ。第4回は、岩佐氏にCerevoを起業したいきさつから、ハードウエアベンチャーを取り巻く状況、メーカーの起業に向けた“壁”の越え方などを聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro


Cerevoを起業したきっかけは。

 大手メーカーの製品はほとんどの場合、マスに向けられたもの。マスのど真ん中を狙って数十万台といった単位で製品を出すことを前提に商品化の判断をするのが大企業の使命。ただそうした製品に対してユーザーの立場としては、あまりワクワクしない。「生活をもっと豊かにして、便利にする」ことをキーワードに僕らは掲げて、数千台、数万台しか台数が出ないかもしれないけれど、大企業が作れないような、技術的にはできてもそこに市場があると判断できない、あるいは大企業として市場性はないと判断している、そんなところに向けて新しい商品を生み出していきたい――。そうした思いでスタートした。

 2009年にコンパクトデジカメにライブ配信機能を載せたものを我々は出しているんですが、それが出てから3年後、4年後になってやっと大手メーカーさんがコンシューマ向けのビデオカメラに同様の機能を載せてきた。大手メーカーさんが取り組むまでにこれだけのスパンがある。我々がやっていたとき、彼らはマーケットはないと見ていたわけですよね。実際には我々のようなプレーヤーが出てきて、かゆいところに手が届くような商品を市場に投入し、その後で大手メーカーさんがそれに追随する。