写真●ジェフ・イメルト氏
写真●ジェフ・イメルト氏
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 家電からエネルギーまで多角的な事業を掲げるGEを引っ張るイメルトCEO(最高経営責任者)は最近、メディア事業を完全売却したことに加えて、金融事業の分離構想も明かした。

 GEを航空エンジンや医療機器といったインフラと各種のエネルギーの会社に転換させる狙いである。さらに春の株主総会では「分析とソフトウエアに大きく投資する」と“分析会社”への転換も宣言している。

 イメルトCEOは「話すより聞こう」とか「個人よりチーム」と、わかりやすい言葉で経営方針を示す。インフラ整備のためには、売り込みより相手のニーズを「聞き」、整備から保守まで「チーム」で動くことが大切というわけだ。

 そのイメルトCEOが分析とソフトウエアにこだわるのは顧客の問題解決に欠かせないとの認識からだ。エネルギーやインフラは安定運用が欠かせない。「故障する前にそれをデータで予見できるといい」。それがイメルトCEOの考えだ。

 すでに昨年、データ分析強化を主眼に置く研究所をカリフォルニア州に設立している。イメルトCEOは「1%にこだわる」とも語る。顧客のインフラの運用効率を1%高めだけで、年間2兆円の利益貢献ができると試算している。

 巨大インフラ企業・GEがデータ分析に乗り出す意味は大きい。発電や航空機エンジンをてがけるインフラ事業会社という発想は今でこそ当たり前だが、GEの社業転換で東芝や日立製作所も大きく舵を切った経緯がある。

 したがってGEがデータ分析の会社になることは、日本企業にも大きなインパクトを与える。原価低減から機能改良、効率運営の支援などモノ作りの現場にデータサイエンスがあふれる光景が日常になるだろう。


酒井耕一
日経情報ストラテジー
 日経ベンチャー記者、ニューヨーク支局長、日経ビジネス副編集長などを経て2012年1月より日経情報ストラテジー編集長。米GE(ゼネラル・エレクトリック)とデータサイエンティストをウオッチしている。