自由民主党の「新たなICT戦略に関する提言 デジタル・ニッポン2013 -ICTで、日本を取り戻す。-」(以下、「自民提言」)の第四部は「テレワークによる雇用拡大」(以下、「雇用提言」)、第五部は「ICTによる医療レベルの向上」(以下、「医療提言」)だ。

 テレワーク、女性の雇用、遠隔医療、等は安倍首相好みのキーワードらしく、日本経済再生本部や施政方針演説等各所で触れている。キーワードは、スマートワーク、雇用クラウド、EHR(Electronic Health Record)連携の国家事業化、医療分野のビッグデータ分析の4つだ。

テレワークからスマートワークへ

 雇用提言のサブタイトルは「テレワークからスマートワークへ」。IT業界としては既に古臭い用語となった「テレワーク」を、進化したモバイル環境を取り込んだ最新の「スマートワーク」と呼び換えた形だ。

図1●テレワークによる雇用拡大に関する基本的な考え方
図1●テレワークによる雇用拡大に関する基本的な考え方
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 基本的な考え方の冒頭にICT国際競争力の強化があるのは、各国のテレワーカー比率とICT国際競争力に相関関係があるとの情報通信白書(平成21年度版)の分析を踏まえての論理だ。またターゲットには、女性だけでなく、失業率の高い若年労働者や高齢者も入っている。雇用拡大に向けた論点として、「テレワーク(スマートワーク)の適用領域の拡大」と「ハローワークの雇用クラウド化」の2点を挙げている。

 テレワークについては、既に多くの実証事業がなされており、技術的な観点よりは具体的な適用職種の拡大の方が重要との理由から、適用領域の拡大を提言している。就労支援水準の向上に関しては、「ハローワーク」という物理的な場所に縛られることなく、求職者がどこからでも活用できるクラウド化を唱えている。

まず政府自らテレワーク化せよ

 タブレット端末やスマートフォンなどのモバイル端末の普及に伴い、既に大企業を中心に新しいワークスタイルが始まっている。テレワークと言えば「在宅」というイメージがあるが、新しいワークスタイルである「スマートワーク」では「在宅」である必要もない。サイライトオフィスでもよいし、移動中でもよい。ただし、これらの環境を構築するのは中小企業には負担が重いので、その支援策強化を提言している。

 また、世界トップレベルの「テレワーカー大国」である米国では、2000年に連邦政府職員のテレワーク推進を法的措置も含め推進したことで一気に拡大。さらに、2010年テレワーク強化法が整備された。これを参考に、日本でもまず政府機関から率先して導入し、日本版「テレワーク強化法」を制定すべきとしている。確かに政府機関でもスマートワークに適した職種はたくさんあるだろうし、政府が国民に言うだけでなく率先垂範して手本を示す意義は大きい。

図2●環境変化に伴うワークスタイルの変化を支援
図2●環境変化に伴うワークスタイルの変化を支援
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