自由民主党の「新たなICT戦略に関する提言 デジタル・ニッポン2013 -ICTで、日本を取り戻す。-」(以下、「自民提言」)の第二部は「サイバーセキュリティと経済成長」(以下、「サイバー提言」)だ。近年、遠隔操作ウイルスや海外からのサイバー攻撃の脅威で国民の関心の高いサイバーセキュリティ対策に経済成長を結び付けた内容で、昨年2月の情報セキュリティに関する提言がベースになっている。

 違いは、当時は野党であったのに対して、今回は与党として内容や論理的裏付けが強化されている点だ。この分野も他の分野と同様、要素技術だけは進んでいるが、それらを組み合わせた仕組みとなると、日本は世界最先端には程遠い。これを産官学総出で挽回して、高度なセキュリティ産業で雇用を増大できるかが今後のポイントだ。

新政権でセキュリティ予算は倍増

 今回の自民提言をまとめるに際して、自民党は政府CIO室に対して、すべてのIT関連予算とサイバーセキュリティ関連予算を洗い出すように要望した。その結果、今年年頭の補正予算と本年度当初予算で、約440億円のサイバーセキュリティ関連予算が計上されたことが分かった。これは民主党政権時代の昨年度予算の2.3倍で、かなりの大盤振る舞いにみえる。

 しかし、GDPに対する比率を比べると、米国とはまだ7.5倍の差がある。また、国際的に見ても、他の先進諸国よりレベルは低いとされている。民主党政権時代から世界最高水準に追い付く事を目指しているのだが、追いつくどころかついていくのがやっとの状況だ。

図1●予算規模とレベル感
図1●予算規模とレベル感
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明確化された政策目標

 細かい話だが、今回の自民提言から「情報セキュリティ」が「サイバーセキュリティ」へと用語統一されている。昨年12月に行われた衆議院選挙での政策集で「サイバー」とされたのがきっかけで、確かにこちらの方が国民としては直観的にわかりやすい。内閣官房情報セキュリティセンター(以下、NISC)も、新たな戦略を「サイバーセキュリティ戦略」としている。

 サイバー提言では、国家安全保障、国民の安心と安全、経済成長への貢献の3分野で基本的な考え方を整理し、政治主導、技術開発、経済成長で各々政策目標を提示している。サイバー攻撃を国家安全保障上の重要課題と位置付ける点(日米安保の対象)、民主党時代は2020年までとされていた世界トップレベル到達を5年以内と前倒ししている点、高度サイバーセキュリティ産業で雇用創出する点、が特徴だ。

図2●サイバー提言の基本的な考え方と政策目標
図2●サイバー提言の基本的な考え方と政策目標
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