自由民主党の「新たなICT戦略に関する提言 デジタル・ニッポン2013 -ICTで、日本を取り戻す。-」(以下、「自民提言」)は、公開された要約版と全体版の他に6部の詳細版からなる(これらは近々に電子出版される予定)。電子政府やサイバーセキュリティのような馴染み深いものだけでなく、国土強靭化、農林水産業、雇用、医療といった分野までカバーしている。これらの全体的な概要と、電子政府について紹介する。電子政府のキーワードは、マイガバメント、オープンデータ/ビッグデータ、政府CIO(内閣情報通信政策監)、ITリロケーション、ITダッシュボードなどだ。

自民提言の視点と特徴

 自民党は、2001年の「e-Japan戦略」以来、与党としてIT戦略をリードしてきたが、2009年9月に政権を失ってから2012年12月の政権復活までの間に、野党として「デジタル・ニッポン2010」、「同2011」とIT戦略を磨いてきた。今回の「デジタル・ニッポン2013」はその流れに沿うものだ。

 自民提言の「はじめに」にあるように、日本を「課題先進国」として「政権に政策の実行を問う」と言うのが基本姿勢だ。この自民提言は、自民党の「IT戦略特命委員会」での議論から生まれたものだが、この委員会には毎回、政府CIO(内閣情報通信政策監)と政府CIO室主要メンバーが出席しており、単なる党内議論ではない。「実行を問う」というのはかなり現実的な内容であることの裏返しでもあろう

 「はじめに」には「経済を、取り戻す」、「安心を、取り戻す」と2つの視点を掲げている。

 「経済を、取り戻す」では、「情報通信インフラは世界最高水準であるのにIT国際競争力は低下気味」である事を指摘した上で「少子高齢化・人口減少に入る日本にとってICT利活用で膨大な効果がある」点からICTの重要性を謳っている。

 「安心を、取り戻す」では、「国家安全保障、暮らしの安心は、我が国の安定的な成長を支える「基盤」」として、復興や防災/災害対策のためにも「ICTによる国土強靭化」を掲げている。「国土強靭化=コンクリート」と思われがちだが、ICTで国土を強靭化するというのは新たな発想だ。

 「はじめに」の最後は、マイナンバー制度や政府共通プラットフォームと共に徹底した国民への開放・連携で、ニーズに合わせた「マイガバメント」の実現で締めくくっている。「マイガバメント」については後述するが、これまで「マイポータル(仮称)」と言われていたものに自治体サービスを加えた、新たな概念と言える。

全体的な特徴として、以下の5点が挙げられている。

  • 経済成長への貢献と国民の安心・安全を重視
  • 民間企業のノウハウやアイデアを積極的に取り込み
  • 国土強靭化や農林水産業等これまでICTにあまり馴染みの無い分野での利活用
  • コンクリートにICTを(クラウド基盤による連携を前提としたICTインフラ構築)
  • オープンなマイガバメント(ビッグデータ利活用、行政サービスだけでなく改革過程もオープン)

 アベノミクス第3の矢である経済成長を主眼とし、民間アイデアを積極的に取り入れているのは、自民党の積極姿勢の表れだろう。