Ethernetが車載用途で普及することで、自動車の環境は民生機器に近づいていく。例えば、高画質のデジタル映像を複数の機器で利用したり、移動体通信を通じたクラウド・サービスを活用したりできる。スマートフォンやタブレット端末との連携も容易になる。

 CANやFlexRay、MOSTといった、これまでの車載LAN規格は、自動車業界が同業界に向けて開発してきた。そのため、外部の機器やネットワーク・サービスと接続しにくい「閉じた環境」だった。これがEthernetの利用で、民生機器のような“オープン”な環境に変わる可能性がある。

 実際、仕様策定に至る経緯や、策定に関わる企業の顔ぶれに大きな変化が生じている。例えば、トヨタ自動車は、自社で検討中だった車載Ethernetの仕様を、早くからホワイト・ペーパーとして業界団体に提出した。外部の機器やサービスとの連携を図るだけに、より幅広く、外部からの意見集約に動いたからだ。

 こうした事例は、自動車業界では珍しい。これまでの車載LAN規格は、非常に限られた企業が仕様を策定・導入した後、他の自動車メーカーが採用を始めていた。

 一方、今回のホワイト・ペーパーに関しては、ドイツBMW社や米General Motors(GM)社、韓国Hyundai Motor社など、世界各地の自動車メーカーが強い関心を寄せており、既に同ペーパーを基に仕様策定に向けた議論を始めているという。

 車載Ethernetの仕様策定に関わる企業も従来と異なる。自動車業界の企業、とりわけ仕様策定をこれまで主導してきた欧州企業だけではなくなった。Intel社やCisco Systems社、Broadcom社といった米国のIT企業が名を連ねている。オープン性を重んじる米国企業だけに、車載Ethernetの仕組みもより開かれた環境になりそうだ。