先ごろ、米Yahoo!がオンラインビデオ配信サービスの米Huluに買収提案を行ったと伝えられた。Huluをめぐっては衛星放送の米DIRECTVやケーブルテレビの米Time Warner Cableなども買収案を提示しており、Huluのオーナー企業はHulu株式の一部売却といった選択肢も検討している。つまりYahoo!がHuluを完全子会社として取得できる可能性は今のところ低い。

 だが、ここ最近の一連のYahoo!の動きは、ライバル企業を提訴することで活路を見いだそうとしたScott Thompson前最高経営責任者(CEO)とは大きく異なり、社内に変革をもたらそうとするMarissa Mayer CEOの意気込みが表れていると言われている。

Mayer CEOはなぜ若い企業ばかりを狙うのか?

米Yahoo!のMarissa Mayer最高経営責任者(CEO)
米Yahoo!のMarissa Mayer最高経営責任者(CEO)

 そのMayer CEOが全速力で進めているのが企業買収だ。Yahoo!は今年に入って二つの大きな買収案件を発表した。一つは17歳の英少年が設立したSummly。Yahoo!はすでにSummlyの技術をiPhone向けニュース閲覧アプリケーションに導入している。そしてもう一つは人気ブログサービスのTumblrだ。こちらの買収金額は11億ドルに上り、Mayer CEOの就任以来、最大規模の企業買収となる。

 SummlyとTumblrの設立はそれぞれ2011年と2007年。創業者の年齢はSummlyが17歳で、Tumblrは26歳。いずれもまだ確固たる収益源を持たない新興企業だ。だが、Mayer CEOがこうした買収で狙っているのは、Yahoo!がしばらく忘れていた若い起業家精神を同社に吹き込むことだと言われている。

 米New York Timesが2013年4月に掲載した記事によると、Yahoo!では過去5年で6人もCEOが交代するなど経営の混乱が続き、数年前まで社内に敗北感が漂っていたという。

 例えば、同社は2005年にソーシャルブックマークのDeliciousと写真共有サービスのFlickrを買収した。いずれも買収当時は、多くの利用者を抱えていた人気のサービスだった。しかし当時のYahoo!はこれらの買収後、開発にそれ以上力を注ごうとはしなかった。

 前者のDeliciousについては、やがて主力事業から外れて、結局はYouTubeの共同設立者に売却されてしまった。一方のFlickrは、Mayer CEOが今まさに機能強化に注力しているサービスであり、先ごろリニューアルを発表したばかりだ。しかしそれ以前のFlickrは、買収当時に比べて勢いがなく、その間に米Googleの「Picasa」など競合サービスの台頭を許してしまった。

 数年前までのYahoo!は、せっかく買収した企業の力を生かせず、後に現れた新興サービスに先を越され続けていた。当時の社内の雰囲気は、活力のないものになっていたとNew York Timesは伝えている。

 こうした状況を打開すべくMayer CEOが取った施策が、相次ぐ新興企業の買収だ。2012年7月のCEO就任後、同氏が行った買収は知られているものだけで7件。このうち、いわゆる創業者や開発チームといった人材の獲得を目的とする「アクイ・ハイア」と呼ばれる買収が6件。唯一アクイ・ハイアではないTumblrは、利用者層が18歳から34歳の若年成人向けサービスである。

 Mayer CEOはモバイル向けサービスの強化を最優先事項と位置付け、若年層に人気のあるスマートフォンやタブレット端末向けサービスの開発を急いでいる。相次ぐ若い企業の買収の背景にはこうした同氏の意向があると言われている。

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