ベトナム中部最大の都市ダナンは港湾都市として発展し、中部経済の中心地だ。リゾート地としても有名で、北部の首都ハノイや南部の商業都市ホーチミンに比べると、どこかのんびりとした風情が漂う(写真1)。そんなダナンが今、IT産業の新たな集積地として注目を集めつつある。

 「ここ数年、ソフトウエアパークの建設などIT産業の振興に向けたインフラ整備に集中投資している」。ダナン市を管轄する同市人民委員会のフン・タン・ヴィエット副委員長は語る(写真2)。

写真1●ダナンの光景
写真1●ダナンの光景
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●ダナン市人民委員会のフン・タン・ヴィエット副委員長
写真2●ダナン市人民委員会のフン・タン・ヴィエット副委員長
[画像のクリックで拡大表示]

人件費は中国の約半分

 ダナン市の最大の特徴は、IT人材の人件費が安いことだ。大卒技術者の初任給は3万~4万円。技術者単価はハノイやホーチミンに比べて20~30%低く、中国の約半分。現時点では人件費の上昇もあまりないという。

 離職率もハノイやホーチミンより低い。FPTソフトウェアのダナン拠点でソフトウェア第17事業本部の責任者を務めるレ・ビン・タイン氏は、「離職率は約8%程度にとどまるため、人材を特定のプロジェクトに固定的にアサインしやすい」と話す。FPTソフト全社での離職率は約12%。ベトナムのIT産業全体の離職率は20%に上るという。

 人材の流動性が低いため、社内に顧客業務のノウハウなどを蓄積しやすい。特定の顧客向けに技術者を固定的にアサインする「ラボ契約」も結びやすい。FPTソフトでは、「ダナン拠点で実施しているプロジェクトの8割がラボ契約だ」(タイン氏)と明かす。

 FPTソフトのダナン拠点は800人強の技術者を擁する。同社に続くのが、ダナン市に本社を構える「ユニテック」だ。約200人の技術者を抱え、大規模なシステム開発を受託している。

 これら2社のほかにも、40~50人規模のIT企業が数多く存在する。こうした規模の企業は、Webアプリの開発などを中心に請け負う。