「10年後までに、日系企業のオフショア開発先に占めるベトナムの割合を10%まで高める」。ベトナム最大のIT業界団体、ベトナム・ソフトウエア・アソシエーション(VINASA)の日本向けビジネス部会である、Vietnam-Japan IT Cooperation Club(VJC)会長のグエン・ドアン・フォン氏は話す。英語によるオフショア開発受託では、他の国々との激しい競争にさらされる。日本語力では中国に次ぐと定評のあるベトナムは、日本市場にこそチャンスを見出していると話す。

VJCの役割は。

写真●グエン・ドアン・フォン VJC会長
写真●グエン・ドアン・フォン VJC会長
[画像のクリックで拡大表示]

 VJCは、ベトナム・ソフトウエア・アソシエーション(VINASA)の下部組織の一つで、現在約30社が参加している。ベトナムと日本とのIT分野でのビジネスを促進することが役割だ。情報サービス産業協会(JISA)と協力してセミナーを開催したり、越日IT企業の交流を進めるイベントを開催したりしている。

ベトナムIT産業の現状は。

 ベトナム政府はICTを重要産業に位置付けており、GDPに占める割合を2020年までに8~10%へと育成する計画を立てている。ソフトウエア産業の規模は2011年実績で11.7億ドル。毎年20~30%は伸びていくだろう。

 年間5万~6万人のIT人材を輩出しており、大学出身者の新卒初任給は300~500ドル程度。8~10年の経験を持つマネージャークラスでは、月額1500~2000ドルが相場だ。

日本向けビジネスについて、どう考えているか。

 現状、ベトナムのソフトウエア輸出先の第1位は米国、2位が日本となっている。ただし英語圏向けのビジネスでは、様々な国との競争となってしまう。その点、日系企業向けのビジネスでは漢字を扱う必要があり、参入できる国は非常に限られているため、チャンスは大きい。

 日系企業のオフショア開発先に占めるベトナムの割合は、ここ10年で0.4%から4~5%程度にまで拡大した。昨今は、中国から委託先を移す企業も増えている。今後10年以内に、10%まで成長したいと考えている。

 ただしこの数字を達成するには、日本語ができるIT人材の育成が欠かせない。ベトナム国内で日本語が使えるIT人材は、まだまだ少ないのが現状だ。大学においても、日本語教育に力を注いでいるのは、FPT大学ぐらいではないか。

どのような育成施策が有効か。

 やはり日本からの支援はどうしても必要だ。最近日本において、定年の延長を促進する法律が施行されたと聞いている。一案だが、そうした高齢のIT技術者の方にベトナムに来てもらい、一緒に仕事をしながら日本語を教えてもらうといった施策も有効かもしれない。

 もう一つ、日本のODAで実施している「HEDSPI(Higher Education Development Support Project on ICT)」プログラムの活用が重要だ。HEDSPIは、日本語のできる高度IT人材の育成を目的に、ハノイ工科大学に設置した特別コースで、毎年120名の学生を受け入れている。上位20名は立命館大学と慶應義塾大学への留学機会も与えられる。こうした人材を上手く活用できるかが、ポイントになるだろう。