PCの代わりにスマホを使うのではなく、専用の業務端末をスマホに置き換えたのが宮崎大学医学部附属病院だ。

 看護師などが電子カルテを閲覧したりする業務端末は1台当たり約20万円するが、スマホなら約6万円で済む。250台の業務端末を置き換えた同病院では、端末コストだけで約3000万円以上を削減したことになる。これまで業務端末は看護師だけが利用していたが、単価が安くなったことで新たに医師全員にもスマホを配布できた。2011年5月に看護師向けに250台、2012年5月に医師向けに400台を導入した。

 同病院では、スマホの拡張性も評価した。従来の業務端末はあらかじめ定められた機能しか利用できなかったが、スマホであれば拡張は容易だ。地元のITベンダーとスマホ向けの電子カルテシステムを共同開発し、現在も機能を強化し続けている。注射の取り違えを防ぐために患者の手首につけたバーコードと注射薬のバーコードをスマホのカメラで読み取り照合したり、体温など医療データを入力したり、さらには患部写真をスマホで撮影してシステムへ登録するなど、あらゆる機能をスマホに持たせた(図1)。セキュリティについては、院外持ち出しを禁止したり、不正アプリの対策ソフトを入れたりすることで対処した。3G通信は利用せず、無線LANのみで通信する。

図1●宮崎大学医学部附属病院のスマホ向け電子カルテシステム
図1●宮崎大学医学部附属病院のスマホ向け電子カルテシステム
20万円ほどの業務用端末を、より安価なAndroidスマホに全面的に置き換えた
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 「今後の院内システムはスマホファーストで開発していく」と、医療情報部の荒木賢二教授は説明する。看護師や医師が持つ院内PHS端末も、スマホのIP電話機能で置き換える計画だ。