「ようやく攻めに出る準備が整った」。ハイアールアクアセールスの後藤幸次テクノ販売企画部部長(写真1)は力を込める。同社はコインランドリー向けの大型洗濯機や乾燥機で、国内市場の30%を握るトップシェア企業だ。しかしここ数年は、じりじりとシェアを落としてきた。原因ははっきりしている。商品開発の停滞だ。

写真1●ハイアールアクアセールスの「IC+ITランドリーシステム」
写真1●ハイアールアクアセールスの「IC+ITランドリーシステム」
郊外型コインランドリー店舗にある、洗濯機や乾燥機を遠隔で管理するシステム。
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 同社はもともと三洋電機の白物家電部門。2011年にパナソニックの完全子会社となった後、2012年に中国家電大手の海爾集団(ハイアール)傘下に入った。洗濯機事業の先行きは不透明になり、肝心の商品力強化が後回しになってしまったのだ。

稼働率を分析し新店開拓

 だが競合にシェアを奪われるのを、指をくわえて見てはいられない。そこで後藤部長はあるシステムに目を付けた。三洋電機時代に構築した、「IC+ITランドリーシステム」である。

 同システムは、コインランドリーに設置した洗濯機や乾燥機に通信機器を搭載し、インターネット経由で稼働率や売り上げ状況を集計・分析する機能を持つ。洗濯機にトラブルが発生した場合は、遠隔地から制御して対応できる。これを武器に、新規顧客を開拓しようというわけだ。

 コインランドリー業界では近年、郊外の幹線道路沿いに大型店をチェーン展開する企業が存在感を高めている。都市型店舗が飽和する一方で、主婦が自家用車で布団や毛布を持ち込むケースが増えているという。

 こうしたチェーン運営企業に対して「過去から蓄積してきたデータを活用して商談できるのが利点だ。どの機種をどんなレイアウトで置けば、最も稼働率が高まるのかを提案できれば、当社製品を選んでくれる可能性が増える」と後藤部長は話す。競合にも洗濯機の稼働状況を遠隔管理するシステムはあるが、「複数店舗で稼働する機器を一元管理できるのは、今のところ当社だけだ」(後藤部長)。

 2013年からは、システムを有効活用した企業の成功事例を、別のチェーンを展開する企業に紹介するサービスに注力する。さらに、スマートフォン用の操作画面を改良したり、サーバーの処理能力を増強したりするなど、システム強化も進める。

 「三洋電機時代には、国内市場の5割を占めていた。ITを活用することで、早期にその地位を回復したい」と後藤部長は誓う。