ここからは、スコラ・コンサルトの柴田昌治氏が行き着いた組織風土改革の手法を紹介していく。2つめは、数時間かけて自分を語り尽くす「ジブンガタリ」だ。

スコラ・コンサルトによるジブンガタリの解説

 参加者全員が自分のことを語り、聴き合い、理解し合うこと。語る内容は趣味や休日の過ごし方、家族のことに始まり、人生の転機や将来の夢まで多岐にわたる。「職場ではあまり話したことがないこと」「素顔が垣間見られること」「自分が大事にしていることやその背景が分かること」が語りの基本となる。

 自分を語るだけでなく、相手の話をじっくりと聴くのがその場のルールになる。人は誰しも「自分に関心を持ってもらいたい」という欲求があり、それに応えてくれる相手には安心感を抱く。そうした相手には自分の本心や本音を話しやすくなる。相手が普段見せない素の部分まで話すと「自分もここまで話してもいいかな」という心理が働く。

 お互いをよく知らない者同士は出身地や出身校、年齢など何かしらの共通項があると親近感を覚える。さらに自分との違いやその背景が分かると、他者の個性に対する理解が進む。お互いに関心が向くようになった状態で、やり取りの中身が変わってくると、新たな発見が生まれて理解の幅はまた広がる。

 場が進むにつれて、内面的な「価値観」「望み」「問題意識」といった“思い”のレベルで重なり合う部分が見つかり、「共感」「賛同」「意気投合」「同志」などの言葉で表現されるような強いつながりが生まれる。

 10人の執行役員が1人当たり最大数時間かけて“自己紹介”する姿を想像できるだろうか。ヤマトホールディングスは2011年、約1年かけてジブンガタリを続けてきた。

 毎月のように、朝から晩まで執行役員が部屋に缶詰になり、普段の職場を離れて自分を語る。特別なプレゼンテーションは必要ない。結論も求めない。話すスタイルも順番も各自の自由だ。