数時間に及んだ柴田氏へのインタビューで浮かび上がった、「いい会社」になるための道筋を提示しよう。それは日本企業にありがちな問題点を整理して解決することでもある。自社に当てはまっていないか自問してみるとよい。柴田氏は支援活動から得られた知見として、「組織風土改革は企業の業績に直結する」と結論づけている。


柴田:組織風土の問題は何も日本だけの問題ではないのですが、日本はその問題が過剰に出やすいことを最初に認識しておくべきです。もともと持っている日本的な体質みたいなものですね。

 一言でいえば、日本人は非常に周りを気にします。自分が思っていることをあまり口にしません。日本が他国に比べて仕事の生産性が低いといわれる理由の1つは、間違いなくそこにあります。では、課題を見てみましょう。

柴田語録(1)社長の操縦かんが利かない

スコラ・コンサルトの柴田昌治氏
(写真:木村 輝、以下全て)

 大きなリーダーシップを取りにくいというのも日本的な特性です。細かい舵取りはできるのですが、大きく方向を変えにくい。分かりやすい話でいうと、社長という操縦席に座って操縦かんを握ってみたけれども、全く利かない状態になっている。この話をすると、多くの社長がうなずきます。何とか思い通りに動かそうと強引にやってみると多少は動き出すのだけれど、下の人たちは命令に従うばかりで思考停止状態になってしまう。

 実は組織風土改革は、社長が操縦かんを握った時に機能しやすくするのが1つの側面なんです。よく改革はボトムアップというけれど、僕はあまりボトムアップだとは思っていません。

 なぜかというと、組織風土改革では大きな意味でのチームワークを作っていくからです。社長を含めたチームであり、キーパーソンのコアネットワークです。社員を主役にするスポンサーシップ(第5回で紹介)も社長を含めたチームの中で生まれてきます。

 そういうものを社内に作っていくことで、今まで空回りしていた操縦かんが少しずつ動くようになっていく。だからビジネスモデルを転換する時などは、組織風土改革が必要になるんです。前回の氷山の絵でいえば、社長は戦略は作れますが、組織風土が良くないと実行できない。僕のところに相談に来る企業の多くがそうです。