前回、「物売り」と「ソリューションビジネス」は、根本的に違うことを前回説明しました。これら2つは補完し合うように見えながら、実は真っ向から対立するものであり、2つの世界では様々な価値観の衝突があります。それが日々の現場の業務にも影響し、それが担当者の顧客に対する姿勢の違いとなって表れてきます。

 例えば以下のようなことです。

  1. 「商談の手離れがよい」ことを善とするか悪とするか
  2. 「標準化」を目標とするか手段の一つと考えるか
  3. 「顧客要求が不明確」であることを不快と感じるか愉快と感じるか

 これらは、実際の商談の場での対立構造となって表れてきます。

 「物売り」から進化したソリューションビジネスを志している会社では、いわゆる昔ながらの営業担当者とソリューション提案担当者がペアとなって仕事をしたり、こうした担当者の所属する二つの部門が同時に仕事をする場面が出てきます。このような場面で思考回路の違いが表面化するというわけです。

「手離れが悪い」ことは機会創出のチャンスでもある

 例えば先の思考回路の対立の一つめ、「商談の手離れのよさ」をどう見るかを考えてみましょう。いわゆる「物売り」の世界では、いかに商談の手離れをよくするかが勝負の分かれ目です。効率的に商談をこなして、商品販売1件あたりの手間をいかに最小化し、商談後の不具合対応などの「後腐れ」を少なくできるかが営業担当の腕の見せ所とも言えます。

 これに対してソリューション提案型の商談では、「手離れが悪い」ことは必ずしも悪いことばかりではなく、むしろ機会を創出するための必要悪と見なすことができます。それは「黙っていてもお客様から呼んでもらって様々な情報を提供してもらえる」絶好のチャンスだからです。

 顧客視点で提案をするためには、自社の製品周辺の情報だけでなく、顧客が何に困っているのかといった製品と離れた情報も必要となります。そうした情報を得るために、この「手離れの悪さ」が“吉”と出ることがあるわけです。

 続いて2番目のポイントの「標準化」に対する考え方の違いについて考えてみましょう。

 「物売り」的な考え方から言えば、商談はなるべく顧客を問わず同じものにできるのが好ましいあり方です。したがってなるべく製品ラインアップもシンプルに説明しやすいもので、なおかつ一つの顧客で挙げた実績をなるべく「横展開」できないかということを常に考えます。これは第1のポイントの「手離れをよくして効率化する」ことにもつながるからです。