グローバルプロジェクトに関わると、様々な問題に遭遇します。それらの問題は第4回で挙げた種々の「違い」に起因します。「地域の違い」「組織の違い」「文化の違い」「言語の違い」および「タイムゾーンの違い」です。これらの違いが、グローバルプロジェクトの遂行を妨げる要因と成り得ます。

 では反対に、グローバルプロジェクトの遂行を促進する要因としては、何が考えられるでしょうか。違いがプロジェクトの遂行を妨げる要因なら、違いを乗り越える方法こそがプロジェクト遂行を促進するでしょう。

 私は約3年にわたってグローバルプロジェクトに関わってきましたが、種々の違いを乗り越えられるような方法論はなかなか見つからなかったというのが正直なところです。

 ただし、私が心がけてきたことで、唯一目に見えてプロジェクトや問題解決がはかどると感じたことがあります。それが「熱意」と「敬意」でした。

 いささか感覚的で抽象的なワードですが、プロジェクト遂行に効果的だった事例を振り返ってみても、全てに熱意と敬意というエッセンスが含まれていたのです。

 今回は、熱意と敬意がプロジェクトに与えるであろう効能を考察し、私が大事だと考える熱意と敬意が含まれていた具体例を紹介しましょう。

熱意と敬意の効能

 そもそも立場や居場所が異なるメンバーを同一の目的に向かわせるには、指揮命令系統や権限移譲などの対応だけでは不十分です。指揮命令系統や権限移譲だけでは、役割を明確にした組織図通りにはメンバーが機能しないプロジェクトが数多く見られます。

 機械に例えると、分かりやすいでしょう。仕組みはできているのですが、それを駆動させるエンジンがないようなものなのです。そのエンジンに相当するのが私の言う熱意ですが、実はこれだけでもプロジェクトはうまく回りません。

 エンジンの働きをよくして、うまく回してくれる“潤滑油”も必要です。そう、潤滑油に相当するのが敬意です。

 グローバルプロジェクトではステークホルダーが多岐に渡ることが多いため、組織体も複雑になりがちです。前述の仕組みに相当する部分も肥大化するため、仕組みを動かすエンジン(熱意)と円滑に回す潤滑油(敬意)の双方が必須になります。

 それでは、私の考える熱意と敬意が含まれていた事例を見てみましょう。