専門家に聞く

まほろば工房 近藤 邦昭氏
まほろば工房 近藤 邦昭氏 まほろば工房 代表取締役。大手プロバイダーなどでネットワーク設計や新規プロトコル開発を手掛ける。2006年に独立。
(聞き手は堀内 かほり=日経NETWORK)

「読破用」は参考書と別に

 私がネットワーク技術者にお薦めする本は、「Internet Routing Architectures」(シスコプレス)です。かつてプロバイダーに勤めていた時代に、業界の知り合いに勧められて読みました。

 この本には、ルーティングプロトコルであるBGP(Border Gateway Protocol)のネットワークの作り方が事細かに書いてあります。当時業界標準だったシスコ製ルーターを使って、BGPやその他OSPFといったルーティングプロトコルも含めて、ネットワークはどう作っていくのかを学びました。もっと深く知りたいことは、インターネット関連の技術文書であるRFCや、特定のプロトコルについて書かれた本などを読んで知識を補いました。

 読み方のポイントは最初から最後まで「読破」すること。私が読んだのは英語版だったので、単語を調べながら1カ月かけて読みきりました。英語の本は大嫌いなんですけどね(笑)。この業界の用語は英語のものが多いので、大体の雰囲気はつかめましたし、慣れてくると意味もわかってきました。

 こうやって苦労しながらも読破したことで、ルーティングを体系立てて理解できたと思います。これは先輩に言われたことなのですが、「厚い参考書」と、薄くて読みきれる「読破用の本」を買うことが大切です。参考書は読みきるわけではないので、厚くて細かく書いてあるものが必要です。読破用の本は読みきることが大事なので、それを考慮したページ数のものを選ぶとよいでしょう。

 ちなみに、この本には日本語版もあります。私が読んだ1年後に日本語版が出ました。でも私は英語版を読むことをお薦めします。正しく日本語に訳そうとすると原文とニュアンスが変わってしまうことがあるためです。

好きなことを突き詰める

 正しく技術の根幹を理解していれば、あとは差分さえ勉強すれば新たな技術も取り込みやすくなります。最初にどれだけ苦労するかが、その後のスキルアップにとっては大きいわけです。私の場合、小学生からパソコンを触り、中高生でパソコン通信にはまるなど、もともとこうした分野が好きだったので、あまり苦とは思いませんでした。

 エンジニアのコミュニティに出てくる人を見ていると、私と同じく、この業界は「好きだからやっている」という人が多いですね。やっぱり「好きなことを突き詰める」ことが大事なんだと思います。

Internet Routing Architectures


Internet Routing Architectures
Sam Halabi 著
シスコプレス発行
$59.20
※現在手に入るのは第2版