写真●筆者が大学生のゼミ生とのやり取りで使っているLINEの画面

 「スマホ(=スマートフォン)のソーシャルゲームにはまって、平日は10時間、休みの日は18時間、食事と風呂以外ずっと。友達もみんなやってて、最近はパズドラ(パズル&ドラゴンズ)。長時間続けようと思ったら課金が必要。結構、みんな使ってるみたい。何万人もいるプレーヤーのうち僕は12位が最高。優越感はハンパなかった。勉強がそんなにできるわけではないし、特別イケメンでもないけど、ネット上では特別の人。SNSもできたから、他のプレーヤーと交流もできて、『神ですね』とか言われる。Skypeでも毎日、他のプレーヤーとチャット…。オフ会では新幹線に乗って僕に会いに来る人までいて、敬語を使われたりする。だから順位を保つのには必死。毎日頑張ってゲームするんですが、一方で必死でバイトをして、一度に1万円以上つぎ込んだこともあります」(高校3年生、男子)――。

 「高1のころはグリーとかアメーバ、最近はLINE(写真)やツイッターかな。ずっとスマホを触っていて、みんなの動きをわかってたい。私はちょっと前までガラケー(従来型の携帯電話、「ガラパゴス携帯電話」の略)。みんなの動きについていけない。お母さんに頼みまくって、最近やっとスマホで快適に。テスト前も横に置いて、みんなで『寝ずにがんばろう』とか、ついつい書き込みに夢中になって、勉強どころじゃなくなる。だってLINEなら、写真もすぐ上げられるし、連絡も簡単。テスト範囲はカメラでひとりが撮って、LINEに貼る。先生の板書をこっそり撮ってる子もいる。スマホのカメラはシャッター音が鳴らないから先生にもばれないし、いちいち書かなくていいから超楽。LINEはスタンプがかわいいからたまに買う。100円くらいだからまあ、いいかなと。めんどうくさいこともあるけど、スマホないとやってけないかも。今年の1年生は、入学前にツイッターとLINEで半分ぐらいがつながって、入学式前に仲間がもうできていたみたい」(高校2年生、女子)――。

 こうした声は特別なものではない。大人が知らないだけで、高校生の多くは同じような生活の中にいる。そのまま抜けられなくなる子もいれば、途中ではっと気づいて元に戻る子もいる。上記の男子生徒は、ある日、ネット上で会った大人に諭され、今は受験勉強に取り組んでいる。

中高生へのアンケートから見えてきた実態

図1●ガラケー、スマホの所持と「イライラ」の関係(筆者が実施したアンケート結果から)

 筆者は兵庫県立大学で教職を目指す学生の指導のほか、いじめやネット問題など、「困っている子」への効果的な対応方法を研究している。2012年11月に大阪の小学生1583人と中学生1009人に、「スマホ・ケータイ・アンケート」を実施。「携帯電話不所持」「ガラケー使用」「スマホ使用」の生活状況と精神状態などについて、クロス集計を行った(図1)。

 そこから浮かび上がってきたのは、スマホから離れることができない子供たち=「スマホチルドレン」の実態とスマホが子供たちの生活に与える影響の強さだった。詳しくは連載の中で解説するが、今回はアンケートの中でも象徴的だった「イライラすることがある」と答えた子どもの比率を図示してみた。小中学生のスマホ使用者は、それ以外よりも高い割合で「イライラすることがある」と答えている。

 「卵が先か、鶏が先か」の議論同様、このアンケートだけでは、スマホの所持とイライラの因果関係までは明確にはわからない。スマホの影響と断言はできないが、このグラフからだけでも、スマホを使用する子どもたちに何かが起こっていることはうかがい知れる。