マイナンバーで扱うべき属性情報には、大きく分けて「個人属性」と「関係属性」がある。個人属性とは、ある利用者個人に属する情報であり、関係属性とは、2人の利用者の間にある属性情報である。連載第3回では、マイナンバーにおける個人属性と関係属性の取り扱いについて考察しよう。
現在、総務省などが検討を進めているマイナンバーのシステムは、個人属性に関しては設計が進んでいるものの、関係属性をどう扱うかについては解決すべき問題が数多く残っている。例えば、マイナンバーでは「Aさんの住所」という「個人属性情報」を調べることは可能だが、「Aさんの配偶者はBさんである」といった「関係属性情報」を調べるのは一筋縄ではいかない可能性がある。
マイナンバーにおける「個人属性」と「関係属性」の扱いを、マイナンバーにおける情報連携のイメージ(図)と、以下に示す住民基本台帳情報とを照らし合わせながら、もう少し詳しく見ていこう。
住所:東京都世田谷区… 山田 一郎 世帯主 山田 町子 配偶者 川村 一子 長女 山田 町郎 長男 川村 利夫 長女の配偶者 川村 利一 長女の長男
「氏名」は、各利用者の個人属性である。「住所」は、ひとまとまりに示されているものの、各利用者それぞれの個人属性だと考えることができる。一方、「世帯主」は個人属性だが、「配偶者」「長女」「長男」「長女の配偶者」「長女の長男」というのは、いずれも「山田一郎」に対する他の利用者の続柄であり、すなわち関係属性である。
関係属性の一つの特徴は、視点が変わると関係が変化する、という点にある。上の例では、山田一郎に対する川村一子の続柄は「長女」だが、川村一子に対する山田一郎の続柄は「父」である。一方、川村一子に対する山田町子の続柄は「母」である可能性は高いが、現実の住民基本台帳では、「配偶者」と「長女」の間に必ずしも親子関係があるとは限らない。この住民基本台帳から分かるのは、川村一子に対する山田町子が「父の配偶者」である、ということだけである。
ここで、「川村一子と川村利夫は結婚しているのか」を意味するクエリーを考えてみよう。仮に、川村一子が「符号X」に、川村利夫が「符号Y」に、それぞれ対応しているとする。この場合、「符号Xに対する符号Yの続柄を市区町村で調べたい」という形で、「続柄」という関係属性を尋ねるクエリを出して、その答が「配偶者」であれば、この2人が結婚していることがわかる。