ユーザー企業がクラウドサービスを利用する際や、システムの運用保守をITベンダーに委託する際、サービスの内容だけでなくシステムの稼働率やレスポンスタイム、障害発生時の対応力といったサービスの品質(サービスレベル)も重視するだろう。

 サービスの利用契約を締結する際、ユーザー企業とITベンダーがサービスの品質基準を明確に規定し、それを達成できなかった場合の対応方法などを合意するものが、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)である。

 サービスレベルを事前に合意しておくことで、「思っていたサービスと違う。この程度の処理能力しかないのなら、そもそも使わなかった」(ユーザー企業)、「料金を抑えているのだから、このレベルの性能は妥当。文句を言うなら、もっと高額なサービスにすべきだ」(ITベンダー)といった不満や、それに端を発する紛争を未然に防ぐことができる。

 ただし、SLAの策定時は十分に注意を払う必要がある。契約書や合意書の書き方によっては、トラブルが起きたときの損害賠償が制限されてしまうケースがあるからだ。なかには「ペナルティーを契約で定めていなければ、ITベンダーは損害賠償などの責任を負わない」などと、SLAの法的効力を勘違いしている人もいる。そこで今回は、ユーザー企業がITベンダーとSLAを結ぶ際の、契約上の注意点について解説しよう。