ユーザー企業のみなさんは、システムの開発・運用をITベンダーに委託する際、どれくらい契約や法律について意識しているだろうか。「契約に時間をかけるより、システムを計画通りに完成させることが重要」と、契約にかかわる合意形成を後回しにしてプロジェクトを進めた結果、あとあと、トラブルが泥沼化するケースは少なくない。

 そうならないために、ユーザー企業はどう対応すればよいか。その答えが、システム開発・運用にかかわる契約・法律(以下、IT法務)のスキルを高めることだ。システム部門や業務部門の担当者がIT法務スキルを高め、契約交渉の段階でお互いの役割や責任範囲を明確にすることで、早い段階でトラブルの芽を摘み取ったり、トラブルが起きても契約内容に基づいて円滑に収束させることができるようになる。

 「そういうことは、法務部門や弁護士に任せればいい」という指摘もあるだろう。だが、実態は違う。経済産業省の「平成22年度情報サービス・システム開発取引に関する調査研究報告書」によると、ユーザー企業がシステム開発・運用を委託する際に契約締結を担当するのは、半数以上の企業で「直接の担当部署(システム部門や業務部門など)」だった(図1)。

図1●ユーザー企業における契約締結門
図1●ユーザー企業における契約締結門
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 システム部門や業務部門がシステム開発委託のようにリスクの高い契約締結を担当していること自体、大問題である。だが、すぐに体制を変えることは難しいだろう。重要案件は法務部門が担当するような体制整備が必要だが、システム部門や業務部門のIT法務スキル向上も不可欠だ。