顧客価値から始める作り方を解説

 「優れた経営者は直感的に適切な経営判断を下しているが、それは顧客満足と自社利益を両立させることを考えたうえでの結論だ。これまで論理立てられていなかったその思考方法を整理すれば、儲ける仕組みを導き出すツールはできるはずだ」

 ビジネスモデルが専門の経営学者である著者は、起業相談や企業向け研修も手掛けるなかでそう決意。儲ける仕組みを導き出す枠組み、すなわちフレームワークを考案した。本書では10年にわたり、新ビジネスの立ち上げやビジネス変革に適用して練り上げた成果を紹介している。

 そのフレームワークとは、9つの質問に答えていくシンプルなものだ。それらの質問に答えていくと、儲ける仕組み、すなわちビジネスモデルが整理できるようになっている。

 特徴は、いきなり儲け方を検討するのではなく、先に顧客に提供する価値を導き出すこと。「儲からないのはマーケティングと経営の整合性が取れていないから」という、企業研修などでの経験を踏まえて得た結論を著者は反映させているのだ。

 フレームワークの解説では、「顧客価値を導くときは、どんな用事を持ったどんな人なのかを最初にはっきりさせる」「9つの質問の回答同士に整合性があるかどうかをチェックしていく」といった、儲ける仕組みを導き出すうえでのポイントも丁寧に示されていて実用性を高めている。

 新ビジネスを立ち上げているものの難航している。ビジネス変革のやり方が分からない。そんな悩みを抱えるビジネスパーソンに、学問と実践の両面で裏打ちされた本書の一読を強く薦めたい。

儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書


儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書
川上 昌直 著
かんき出版発行
1680円(税込)