4台の人型ロボットと1人の作業者が1つの組み立てラインを形成する工場──。通貨処理機大手であるグローリーの埼玉工場が今、大きな注目を集めている(写真1)。
2013年3月、13台の人型ロボット「NEXTAGE」が本格稼働し始め、人と一緒に働く近未来的な現場が動き出したからだ。現在、同工場には17台の人型ロボットがいるといい、残りの4台は新ラインが出来次第、そこに“配属”される予定だという。
既に人型ロボットたちは複数のラインに投入されている。写真1の組み立てラインの場合、人型ロボット4台が一連の流れ作業をしており、ロボット1台が受け持つ1工程当たり、15点ほどの部品を4~5分のタクトタイムで組み上げ、隣のロボットに仕掛かり品を渡している。
4台目の人型ロボットは、最後に控える作業者に全体の80%まで組み上がった半完成品を渡す。最後の工程だけ、作業者が受け持っている。
ただし、安全面から、人型ロボットが直接、半完成品を人に渡すことはない。必ず台の上にいったん置いて、間接的にやり取りするようにしている。
興味深いのは、人型ロボットが自分の作業に「ちょっと自信がない時」は、半完成品を通常とは違って斜め向きに置くことで、作業者に「要確認」をアピールすることだ。
一緒に働く女性の作業者も、特に違和感はないという。
実は4つの「目」がある人型ロボット
埼玉工場で働く人型ロボットは正確に言えば、上半身だけから成る双腕型ロボットだ。
顔には人と同じく目(カメラ)が2つあり、画像認識しながら作業を進める。カメラに映っている画像は、ロボットの手前にあるモニターで確認できる。
実はこの人型ロボットは両手にもそれぞれ1つずつ目(カメラ)が付いているので、そこは人とは違う。合計4つのデジタルな目を持っていることになる。
4つの目を常に光らせ、人型ロボットは器用に両面テープをはがしたり、ドライバーでねじを締めたりする。そうした異なる作業に応じて、複数の「ハンド」も自分自身で随時取り換え、黙々と組み立てを続けていく(写真2)。
人型ロボットは同じ作業をどれだけ続けても文句1つ言わないし、それこそ疲れ知らずだ。電動なので怖いのは停電だが、その場合は、人が代わりに持ち場に入ることができる。人型ロボットはまさしく人の代替作業をしているからこそ、そうした交代が可能になる。組み立て作業を人だけでも続けられるライン設計になっているのである(写真3)。その意味では、人型ロボットの動作改善は、基本的には人の場合と同じなのだ。