「年初のシステム障害から各種対策を実施したものの、再び障害を起こしたことをお詫びしたい。再度発生しないよう最善の努力をしていく」。KDDIの田中孝司社長は、2013年4月30日に開催した決算説明会でこう語った。

 田中社長の謝罪は、4月に2度にわたり発生した「au」携帯電話サービスにおけるシステム障害に対してのもの。1回目の障害は4月16~19日に発生。「iPhone」などの利用者向けメールサービスの一つ「Eメール送受信サービス」のリアルタイム受信設定が利用不能になり、最大288万人が影響を受けた(関連記事)。

表●KDDIの「au」携帯電話サービスで4月に発生した障害の概要
表●KDDIの「au」携帯電話サービスで4月に発生した障害の概要
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 2回目の障害は4月27日に発生した。東京都や神奈川県、山梨県の一部で「4G LTE」サービスが通信不能になり、最大59万人が影響を受けた(関連記事)。

 1回目の障害は、新システムへの切り替え時に発生した。(1)誤ったサーバーに接続したことによる認証エラー、(2)認証サーバーの過負荷、(3)メールボックスサーバーの過負荷、が連鎖した。(1)の原因は、手順書に記載したコマンドのミス。「レビューを繰り返したが、ミスを発見できなかった」(嶋谷吉治 取締役執行役員専務)。(2)はハードウエア障害がきっかけだ。トラフィックが増える朝8時まで復旧作業が長引いた。(3)は「メールの消失を懸念して流量調整が遅れた」(嶋谷専務)ために発生した。

 2回目の障害は、基地局間の切り替えなどを制御する「MME」のソフトウエアのバグが原因だ。「新システムへの切り替えなどは行っていない。バグが発生した理由は究明中」(広報)という。

 KDDIは12年12月31日と13年1月2日にもシステム障害を起こし、最大で180万人が影響を受けたなど、大規模障害が相次いでいる。田中社長は、年初の障害と今回の二つの障害は「独立した事象が連続して起こった」と説明する。

 システム障害につながる事象がなぜ連続して発生したかについて、田中社長は陣頭指揮を執って究明していくと強調する。しかし、具体的な会議体の設置などは「現在、検討中」(広報)で、詳細は決まっていない。

 嶋谷専務は「今後もシステムは自社で構築・運用していきたい」と語る。「自社で構築・運用することで、新サービスを柔軟に提供できる」(同)というのが理由だ。急増するスマートフォンに対応し、システムを競争力の源泉とし続けるためには、障害防止に向けた抜本的な対策が不可欠である。田中社長による“有言実行”が求められる。