本連載は、米スタンフォード大学などで起業家教育の教鞭を執るスティーブ・ブランク氏のブログ厳選集である。シリアルアントレプレナー(複数の起業経験者)である同氏の起業アプローチは、シリコンバレーだけでなく、米国東海岸の大学や政府系機関からも強い支持を受けている。ベンチャー企業の創業者だけでなく、既存企業の新規事業立ち上げに携わる方には必読のブログと言えるだろう。(ITpro)

著者メッセージ

日本の読者の皆様とアントレプレナーの皆様

 この度の東日本大震災で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますと共に、1日も早い復興をお祈りしております。私は、以前から仕事を通じて日本人の気質と、まれに見る真摯な勤労態度を知っておりますので、このような悲劇からも、被災地の皆様方が力を合わせて立ち直り、時間と共に以前の生活を取り戻されることを、固く信じております。

 1996年に、私は自宅の居間でエピファニーを設立しましたが、これが私自身が設立した最後の企業となりました。シリコンバレーで8社のハイテク関連のスタートアップ企業に従事した、21年間の経歴に幕を下ろし、1999年に引退しました。引退後、時間をかけて自分の経歴を顧み、私が考案した「顧客開発モデル」を基にした、スタートアップ企業を構築するための「The Four Steps to the Epiphany」(邦題「アントレプレナーの教科書 新規事業を成功させる4つのステップ」、2009年5月、翔泳社発行)という本を書き上げました。

 そして私自身は、アントレプレナーからカリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学などの大学および大学院でアントレプレナーシップを教える者へと転身したのです。

 そして過去3年間、顧客開発モデルに基づいたブログを、ほぼ毎週1回のペースで更新しており、米国だけでなく、広く他の国々の皆様にもお読みいただいています。

 この度、日経BP社のITproで、私のブログを掲載いただけることとなり、大変光栄に思っております。「Silicon Valley Way(シリコンバレーのやり方)」と「Silicon Valley Spirits(シリコンバレー魂)」を、日本のアントレプレナーの皆様にお伝えできる機会をいただいたことに感謝し、米国や他の国々のスタートアップ企業の方々に役立てていただいたことが、 日本のアントレプレナーの皆様にもお役立ていただけることを願っております。そして、日本の皆様が起業にますます積極的に挑戦されることを祈っています。

スティーブ・ブランク

監訳者メッセージ

 今回、スティーブ・ブランク氏のブログを日本語化し、日経BP社のITproでご紹介できることに大変感慨深い思いを抱いています。

 ブランク氏のブログは、彼がシリコンバレーで経験した8社のスタートアップでの経験と知識をもとに、過去10年間、カリフォルニア大学バークレー校、コロンビア大学、スタンフォード大学/工学部/MBA課程などで教鞭をとりながら考案した「顧客開発」方法論のほか、友人の先生仲間の「ビジネスモデル開発」、「アジャイル開発」、「スリム開発」などの方法論を組み合わせたものです。アントレプレナーを志している方々には、「必読のブログ」と言われ、幅広い方々に読まれています。

 日本でも、起業家の方、起業家を目指す方々だけでなく、いろいろな形でビジネスに携わっていらっしゃる方々をはじめ、今日本に必要な「興す力」を大きくするためにも、何らかのヒントやインスピレーションが与えられると強く願っています。皆様の同僚、友人たちに、ブランク氏のブログを読むことをお薦め下さい。よろしくお願いいたします。

山本雄洋(Tak Yamamoto)/木村寛子