写真4●ラオスのIT企業アムズクレッシェレが開設した、ラオス語による初の商用ポータルサイト「Lao gogo」(右)。下はサイトオープン記念式典の様子
写真1●ラオスのIT企業アムズクレッシェレが開設した、ラオス語による初の商用ポータルサイト「Lao gogo」(右)。下はサイトオープン記念式典の様子
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 2013年2月28日、ラオスの公用語「ラオス語」による初の商用ポータルサイト「Lao gogo」がオープンした。サイト開設式典には、ラオス科学技術省のヴォービェンカム・ヴォンダラー大臣も駆け付けた(写真1)。

 Lao gogoを構築したのは、ラオスで唯一の日系IT企業であるアムズクレッシェレだ。現地有力企業アムズグループと日本のIT企業クレッシェレとの合弁会社である。Lao gogoはニュースや占い、フリーメールなどのサービスを提供する。オープンから2~3日間で1万人がサイトを訪問した。

 アムズクレッシェレが手掛けるのはポータルサイトの構築・運営だけではない。クレッシェレがタイ拠点で受託するスマホアプリのオフショア開発の支援も担う。現在3人のラオス人技術者を雇用しているが、「5年後には200~300人規模に増やす。ラオス証券取引所への上場が目標」とクレッシェレの竹菱康博会長兼CEO(最高経営責任者)は強気だ。根拠はある。ラオス人のIT人材を獲得できるメドがついているのだ。

 ラオスの最難関大学であるラオス国立大学の工学部IT学科には、国際協力機構(JICA)の支援で運営している教育コースがある。大学院生を対象に実践的なソフト技術などを教えており、年間約50人のIT人材を輩出する。ところがラオス国内には、これらのIT人材を引き受けるIT企業が少ない。そこでアムズクレッシェレは人材の受け皿としてJICAとの協力体制を築き、優秀な人材を安定的に採用できる仕組みを構築しているわけだ。

大手でも技術者30人程度

 とはいえ、ラオスのIT産業規模はまだ小さい。IT系企業の新卒社員は年200人規模にとどまり、業界全体でもIT系の技術者数は5400人程度しかいないとされる。この人数はベトナムの1割にも満たない。しかもその過半数は個人プログラマーであり、5人以上の技術者を抱えるIT企業はわずか20社程度。データコムやサイベリア、APISといった“大手”でも、最大30人規模だ。

 規模から見るとラオスにおけるオフショア開発は盛んとは言い難い。ただし裏を返せば、IT人材を獲得しやすい環境とも言える。

 新卒IT人材の初任給は200ドル弱と、ミャンマーと同程度の水準だ。しかもIT人材を大量採用している企業は外資系を含め見当たらない。「要員数は多くはないが、ほかの企業が進出していないからこそチャンスがある」(クレッシェレの竹菱会長)。

 海外からの開発受託経験を持つIT企業も存在し、日本からの案件を受託するところもある。最たる例がビラオだ(写真2)。同社のカムサワイ・シーパセート社長は日立グループで10年近くの勤務実績を持つ。日本の建築会社であるマックス・ジャパンからWebアプリの開発業務などを請け負う。同社のパサイ・ピチットシステム開発部課長は、「他にもデータ加工などの手間のかかる単純業務をビラオに委託している」と話す。

写真5●ラオスのIT企業ビラオの開発現場の様子
写真2●ラオスのIT企業ビラオの開発現場の様子
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