ITエンジニアの仕事は、モノ作りと言っていいでしょう。情報システムというのは物理的な形がなく、目に見えづらいものですが、確かに何かを作っています。当然そこには、モノ作りの醍醐味があるはずです。

 自分が作った情報システムによって、今まで手作業で実施していたことを自動化できたり、これまで不可能だったことができるようになったりする。こうした実感が得られる仕事は、間違いなく「おもしろい」仕事です。

 でも実際は、こうしたおもしろさを実感できていないITエンジニアが多いように感じています。「仕様は顧客が決めるもの」という発想になっていては、自分たちで作ったという実感は得られにくいです。特に受託開発で顧客と接することなく仕様書通りにシステムを開発していると、モノ作りの醍醐味を味わいにくいように思います。

 もっとモノ作りの醍醐味を感じられるようにするにはどうしたらいいでしょうか。自分の作ったものが誰かを楽にしているという実感。自分の考えたことが多くの人に影響を与えているという実感。そうした実感を得るには、エンジニアとしての「こだわり」を持つことが必要だと思います。

 例えば、システムを構成する要素(サーバー、ストレージ、ネットワーク装置、OS、データベースソフト、ミドルウエアなど)の一つひとつに、なぜこの製品なのか、なぜこの技術とこの技術を組み合わせるのか、自分なりにベストと思うものを徹底的に考えてシステムを構築するということです。

 顧客のニーズを満たすのは当然ですが、顧客が望む直近のニーズだけでなく、先々を予測して製品や技術を選びます。将来、エンジニアが想定した通りになれば、顧客に喜ばれ、モノ作りの醍醐味を味わうことができると思います。

 サーバーやミドルウエアを選定する立場でない場合でも、開発で用いるフレームワークを選定し、開発の進め方を工夫するといったことは可能でしょう。そうしたとき、「いつもと同じツールや同じ方法の方が慣れているので楽」といった発想ではなく、もっとこうしたらよくなるのでは、といったことを考えるのです。そうしたことでも、モノ作りの醍醐味は得られやすくなると思います。

 ここまで書いたことは、「ITアーキテクトの視点」だと思います。システムアーキテクチャーはどうするか、アプリケーションアーキテクチャーはどうするか、といったことを考える視点。ITエンジニアは、ITアーキテクトの視点を持てばモノ作りの醍醐味を感じられ、仕事が楽しくなるのではないでしょうか。