前回は運用時にどうしていくべきかについて紹介し、サービスローンチ後から本番が始まることを説明した。PDCAサイクルを回していくこと、そのために必要なKPIの設定やその測定ができる状況にすることの重要性を提示した。今回からは、これまで概要編や応用編で説明してきたことを実際の事例に当てはめながら見ていく。

写真●ドクターシーラボの「ペコっ」
写真●ドクターシーラボの「ペコっ」
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 今回取り上げる事例はスキンケア化粧品などを開発・販売するドクターシーラボが実践している「ペコっ」だ(写真)。この事例は筆者が代表を務めるゆめみが実施したものであり、筆者は関係者に該当するが、本記事では内部関係者でないと知り得ない情報は使わず、1ユーザーの立場で知り得る情報を元に記載することをあらかじめお断りしておく。この事例は2012年末から始まった取り組みで、「ペコっ」というのは感謝の印を表現する「単位」である。ゲーム要素的に表現すれば、経験値に近いものだ。

 以下でこの取り組みについて説明しよう。

 ユーザーがサイト内のページを見たり、商品をお気に入りに登録したり、商品を購入したりといった様々な行動を取るたびに、「ペコっ」という経験値のようなポイントが獲得できる。獲得した「ペコっ」数によって自身の“レベル”が上がっていく仕組みである。

 このレベルはキャラクターに紐づいており、レベルが上がるとキャラクターの画像も変化し、成長していくようになっている。各ユーザーには自分がどの段階にいるのかを判断するためのステータスが与えられており、各ステータスの程度が可視化されている。これらのステータスはユーザーが取った行動に応じて「商品知識値」「探索経験値」といったもので表現されている。

キャラクターの育成はインナーリワードとして機能

 こうした仕掛けは、ゲーミフィケーションの考え方としてはそれぞれ何に該当するだろうか? まずはリワードの観点から見てみよう。ここで表現されているステータスやそのレベル、あるいはキャラクターの育成というものは、基本的にインナーリワードとして機能している(リワードについては、第5回 ゲーミフィケーションは非金銭的リワードが得意を参照)。

 ドクターシーラボには「肌トラブルに悩むすべての人々を救う」という企業理念がある。そのためユーザーにとっても、このサイトを利用することで肌のトラブルが解消されていくこと、あるいはそのための知識が得られていくことを実感できることは、非常に重要なこととなる。

 このユーザーステータスの可視化は、こうしたことを実感してもらうことを意図したものと考えられる。キャラクターの成長およびその称号の名称は、学校にたとえられている。こうしたことも、肌の悩みについての“学び”を深めている様子を表現しようとしていると言っていいだろう。