発展途上国(新興国を含む)のモバイルインターネット市場を活性化させる動きが目立ってきた。各国の携帯事業者が、フェイスブック、グーグル、オペラといったIT業界の大手プレーヤーと提携し、無料・格安のサービスを投入している。発展途上国におけるモバイルインターネット市場の現状と各サービスの特徴を解説する。

 ITU(国際電気通信連合)が公表している報告書「情報社会の計測報告2012年(Measuring the Information Society 2012」)によれば、2011年末時点で、先進国におけるモバイルブロードバンドの普及率(256kビット/秒以上のサービスで3カ月以内に利用があった契約をカウントしたもの)は51.3%と過半数に達した(図1)。一方で、発展途上国(新興国を含む意味で使用)は1桁台の8.0%と極めて低い水準にとどまっている(先進国、発展途上国の分類はITUによる)。

図1●人口100人当たりの稼働モバイルブロードバンド契約数
図1●人口100人当たりの稼働モバイルブロードバンド契約数
ITUは「256kビット/秒以上で3カ月以内に利用があった契約」を「稼働モバイルブロードバンド契約(Active Mobile-broadband Subscriptions)」と呼んでいる。ここでは人口100人当たりの稼働モバイルブロードバンド契約数を示した。なおITUは、世界各国を「先進国」と「発展途上国」の2つに分類している。
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経済的負担の大きさが普及を阻害

 実は発展途上国でもモバイルインターネットが普及するための下地は整いつつある。(1)携帯電話普及率(ITU統計)は2011年末時点で既に約8割に達している、(2)多数流通しているフィーチャーフォンのほとんどがインターネット接続機能を備えている、(3)固定電話の普及率が低いままで頭打ちを迎えている国が多い─などがあり、携帯電話経由でインターネットに接続したいというニーズは高い。

 にもかかわらず、発展途上国のモバイルインターネット普及率が低い背景には、経済的な問題がある。2007年に世界資源研究所および国際金融公社が共同発行した報告書「次なる40億人」によれば、BOP(Base of the Economic Pyramid)層と定義される1人当たりの年間所得が3000ドル以下の世帯(基準年2002年、購買力平価換算)が世界人口に占める比率は約7割と高く、そのほとんどが発展途上国の人々である。