日経BPシステム運用ナレッジは2013年4月17日、「運用イニシアティブ宣言!“開発レス”時代に求められる『攻めの運用』とは」をテーマにパネルディスカッションを開催した。情報システムの運用を取り巻くさまざまな環境変化や課題、さらに今、問われるシステム運用力などについて討論した。当日は、企業のシステム運用担当者など約250人が来場し、ユーザー企業やITベンダーを代表した4人のパネリストの発言に耳を傾けていた。

 パネルディスカッションの前半では、情報システムの変化や課題について、登壇者それぞれの視点を踏まえながら意見が交わされた。「スマートフォン活用などユーザーのITスキルは上がっている」「運用の課題解決には情報システム部門の改革が必要」といった発言まで飛び出した。

 司会は日経BPシステム運用ナレッジ編集長の森重和春。パネリストはユーザー企業からはマネーパートナーズソリューションズ システム部長の風間淳一郎氏と富士フイルムコンピューターシステムのシステム事業部ITインフラ部部長の柴田英樹氏が登壇。ITベンダーからはアシストのシステムソフトウェア事業部技術1部部長の蛯名裕史氏、TISのIT基盤サービス本部IT基盤サービス第1事業部DCアウトソーシング第1部部長の穴太隆氏が参加した。

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多様化するニーズにスピードで応える

森重:情報システムの運用は、IT活用による顧客サービスの質を上げるために、企業にとってこれまで以上に重要な存在になっている。しかもクラウドコンピューティングやモバイルの活用など情報システムが多様化していくなか、ますます難しくなっているともいえる。

 そこでユーザー企業やITベンダーの立場でパネリストに情報システムの運用の現状やあるべき姿について話し合い、今後の情報システムの運用が目指すべき「攻めの運用」について議論していきたい。まずは最近の情報システムの運用の現場が、どう変わってきているか聞きたい。

マネーパートナーズソリューションズの風間淳一郎氏
マネーパートナーズソリューションズの風間淳一郎氏
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風間:オンライン金融商品を取り扱うマネーパートナーズのシステム会社として、当社は情報システムの開発・運用を手がけている。一般ユーザーである顧客にネットでサービスする、いわばBtoCのビジネスだが、最近は顧客の動きが大きく変化している。

 たとえば顧客が使う端末はいまやパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットにも及んでいる。アンドロイドのバージョンにも対応しなければならない。ブラウザーだけは済まなくなってきた。

 しかも情報の伝達スピードが上がってきており、システムトラブルが発生すると、すぐにツイッターで発信されてしまう。今まで以上に素早く対応しなければいけないなど、当社もスピード感覚の意識が変わってきた。

 こうした状況のなかで、スキルやコスト、期間短縮なども問われており、厳しいものがある。

富士フイルムコンピューターシステムの柴田英樹氏
富士フイルムコンピューターシステムの柴田英樹氏
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柴田:富士フイルムの情報システム部門が機能分化した当社は、グローバル化する親会社のIT戦略の立案から情報インフラの運用・保守まで担っている。

 親会社のグローバル経営の加速に伴い、新興国への進出やM&A(企業の合併・買収)による事業再編などが起こり、これらを支援するために情報システムの要求がますます高くなっている。だが「コストセンター」ともいえる存在なので、むやみに投資を増やすわけにはいかない。多くのニーズのなかで、コストをいかに最適化するかが問われている。

 当社の場合、情報システムの上流工程を担えるようにしてほしいとの声もある。クラウドやスマートデバイスなどを積極的に使って社員のワークスタイルを変革できないか、などの要望も社内から出てきている。そういった対応も求められている。

蛯名:ITベンダーの立場から見ると、情報システムの「運用」という言葉の本質はあまり変わっていないと思う。だが仮想化やクラウドという新しいアーキテクチャが次々に出てきているなど、さまざまな環境変化への対応に求められるスピードが、特に速くなっていると感じている。しかもコンプライアンスが厳しく言われるなど、安全面も重要になってきている。単にスピードを高めるだけでなく、安全面も考慮しないといけない。

 さらに最近はスマートフォンを活用するユーザーがどんどん増えている。今までは情報システム部門が企業内のIT活用を主導してきたといえるが、ユーザーが新しいITを積極的に使うようになるなど、ユーザーのリテラシーというか、ITスキルも高まってきている。

穴太:アーキテクチャの話が出たが、仮想デスクトップなど次々に新しい技術が登場している。ITベンダーにとっても、これまでと比べものにならないほど幅広い技術の知識が不可欠で、品質を保ったまま新しい技術に追随していかなくてはならない。

 もちろん、ITベンダーとしては、ユーザー企業の多くのニーズに応え、情報システムの安定稼働につなげていく必要がある。しかも運用コストの削減も求められる。いろいろな要素を同時に実現していくにはどうすべきかを日々、考えている。