ITproの連載『ひとつ上のヒューマンマネジメント』の著者である芦屋広太氏と、『ダメな“システム屋"にだまされるな!』など“システム屋"シリーズの著者である佐藤治夫氏の対談。最終回では、IT技術者やITコンサルタント、ユーザー企業の情報システム部員として働く“システム屋”としてキャリアを重ねていくための心構えについて、2人の経験を交えながら語り合ってもらった。

(聞き手・構成は清嶋 直樹=PC Online


前回はIT業界で活躍するために必要なスキルについて語っていただきました。一方で、これからIT業界でキャリアアップを図ろうとしている人に向けて言いたいことはありますか。

佐藤:これはちょっと極論かもしれませんが、私は「“文系の人”でもシステムエンジニアになれる」という風潮には異を唱えています。先日の記事『なぜ、「技術力のないシステムエンジニア」が通用するのか』でもそう書きました。

 そもそもシステムエンジニアというのは物事を論理的に突き詰めて、あらゆるケースを漏れなくだぶりなく想定して、情報システム構築という手段で課題を解決するプロフェッショナルです。米国やインドなど海外では、大学などでコンピュータサイエンスの専門教育を受けていなければ、システムエンジニアにはなれません。

 ところが日本では専門教育どころか、文系学部出身でも、プログラミングをしたことがなくても、システムエンジニアになれるといいます。そう採用活動でPRしているIT企業の担当者も少なくありません。IT業界の景気が良かった頃に、文系の新卒学生をどんどん採用した時の流れが、今も残っているのでしょうか。

 もちろん“文系の人”が、有能なシステムエンジニアになったケースも多く知っています。しかし、「ダメな“システム屋”」になってしまうケースも、また少なくありません。

 これは、プロバスケットボール選手に長身の人が多いのに似ているかもしれません。長身でなくても人一倍して、フィジカル面をほかの何かの能力でカバーして、成功する人はもちろんいます。ただ、やはりバスケというスポーツのルールでは長身の方が有利なのもまた事実です。

“COBOL上司”と“Java部下”の衝突

芦屋:それは同感です。確かに建築家に文系学部出身者はあまりいないですよね。

 一方で、コミュニケーションという観点で考えると、専門知識が邪魔をすることもしばしばあります。専門知識があるに越したことはないのですが、それがゆえに「マイクロマネジメント」に陥ってしまうのです。

 例えば、プログラミング言語にCOBOLとJavaというのがあります。ベテランのシステムエンジニアには、COBOLに精通している人が少なくありません。一方で、若手はJavaのスペシャリストだったとしても、COBOLなんて全く知らないはずです。

 このベテランと若手が上司と部下の関係になった時に、問題になります。“COBOL上司”と“Java部下”が衝突するとかなり厄介なことになります。

佐藤:なるほど、それは厄介そうですね。

えっと、2人の間では既に話が通じているようですが、私はまだ流れが分かりません。Javaはちょっとだけ分かっているつもりなのですが。芦屋さん、どういうことかもう少し教えてください。