外資系ITベンダーなどで計画マネジメントに携わってきた筆者によると、計画は「考えたり書いたりするのと同じ普遍的な技術」だという。本書はこれを体系立てて実践的に解説する。

 大規模システム構築や大型プロジェクトから社内会議、人生設計まで、計画が有効な場面は実に幅広い。ところが多くの活動は計画を立てずに行われ、必要以上の労力を要したり失敗したりしている。計画の立て方が分からないからだ。ここで「計画は分野ごとに特殊性がある」と誤解している人が多い。本書は作業計画からプロジェクト計画、事業計画、旅行計画まで、あらゆる計画には共通性があると説く。この共通性を「計画のフレームワーク」として体系立てている。

 計画には工程を時間に間に合わせるための「日程計画」、数字を達成するための「予算計画」、方針を決めるための「仕様計画」の3種類がある。工程の期限を管理する日程計画を計画と誤解している人も多いが、計画の一側面に過ぎない。

 実行性のある計画を立てるには、計画遂行に必要なことを整理して、「網羅性を高める」ことや「(やるべきことの)理由や根拠が浮かび上がるようにする」ことが重要だ。本書はその技術も解説している。

 具体的には、「計画のフレームワーク(構造)を決める」「前提条件を洗い直す」「初めての箇所を特定する」というステップで全体計画をまず作り、詳細計画に落とし込んでいく。本書ではこの作業を先に挙げた三つの計画に当てはめて、留意点を詳しく解説している。この流れを踏まえるだけでも計画は画期的に改善されるだろう。実行に向かない計画に共通するのは前提条件が現実と異なることだ。「初めての箇所を特定する」のは、未知の作業をより慎重かつ詳細に検討するための配慮だ。これで計画にメリハリができる。

 このような要領を踏まえて、本書のアドバイスを参考にしながら三つの計画を作成していけば、分野に限らず実行に「効く」計画ができるだろう。

 評者 好川 哲人
神戸大学大学院工学研究科修了。技術士。同経営学研究科でMBAを取得。技術経営、プロジェクトマネジメントのコンサルティングを手掛ける。ブログ「ビジネス書の杜」主宰。
「実行」に効く計画の技術


「実行」に効く計画の技術
浦 正樹 著
翔泳社発行
1890円(税込)