今回の話題は、起業の地域コミュニティーです。行政主導による起業活性化はよく聞く話ですが、成功した話はあまりありません。今回は、その理由を看破しています。日本でも大いに参考になりそうな話です。(ITpro)

 アントレプレナーシップの地域コミュニティーを構築する方法に関する、初めての「ハウツー本」が上梓されました。これは、ブラッド・フェルド氏の「スタートアップ・コミュニティー」であり、地域集団の構成要素を理解使用とする人の必読書である「地域の特異性」と「スタートアップ・ネイション」、必読ブログである私の「シリコンバレーの秘密の歴史」シリーズと共に、必読品に加わりました。

 ブラッド・フェルド氏は、スタートアップ企業の創業者で、モビアスとファウンダーリーというベンチャー・キャピタル(VC)2社の共同創業者であり、彼をおいて、この書籍を書くのに適した人物は恐らくいないでしょう。

主導者と育成者

 フェルド氏の論旨は、一般の常識に反して、アントレプレナーがスタートアップ・コミュニティーを主導し、それ以外の人たちはコミュニティーを育てるというものです。

 フェルド氏は、地域のアントレプレナー的リーダーになりたい人の資質として以下のものをあげます。その地域に20年以上の長い間コミットする必要があり、その地域と地域のリーダーは必ずその中に含まれ、ノン・ゼロ・サム・ゲーム(勝ち負けの総和がゼロにならないゲーム)ができ、メンターシップ的な発想をもち、実験や短期的な失敗をいとわないことです。

 それを育てる側には、地区行政、大学、投資家、メンター、サービス・プロバイダー(会計士、弁護士など)、大企業が含まれます。地区行政、大学、投資家の人たちは自分たちがリーダーだと考えますが、フェルド氏の論旨は、それが何10年も続いた間違いだということです。

 これは、非常に重要な洞察かつ大きなアイデアで、21世紀の地域エコシステムを見通し構築するための新鮮な方法です。もしかしたら正しいかもしれません。

活動とイベント

 私が最も驚いたことの一つは、地域コミュニティーは、全ての参加者を魅了するために、継続的な活動とイベントを開催すべきという考えです。フェルド氏の居住地であるコロラド州ボルダー市を例にとると、この小さなアントレプレナー・コミュニティーには就業時間があり、「Boulder Denver Tech Meetup」「Boulder Open Coffee Club」「Ignite Boulder,Boulder Beta」「Boulder Startup Digest」「Startup Weekend」「コロラド大学New Venture Challenge」「Boulder Startup Week」といった各種イベントがあります。ボルダー市だけで10万人(ボルダー周辺を含めると30万人)規模の都市における、この活動とイベントの数には驚嘆します。これらは行政府あるいは一つの団体が催しているのではありません。この全ては、アントレプレナー的なリーダーが興した草の根活動の賜物です。これらのイベントは、スタートアップ・コミュニティーの健全さと層の厚さを証明しています。