アジャイル開発の主要な手法の一つ「スクラム」の原点は、日本にあった。本書のインタビューで、スクラムの共同提唱者の一人、ジェフ・サザーランド氏は、考案した当時を次のように振り返っている。

 「開発チームはいつでもプレッシャーをかけられ、管理者たちはいつも機嫌が悪く、そして顧客はいつも不満を抱えていた。(中略)オブジェクト指向的な組織構造を作ったらどうだろうかと考え(中略)新しいソフトウェアの作り方に、最も重要な影響を与えることになる論文に出会った」。その論文は、野中 郁次郎氏が共同執筆したもので、階層型ではない新しい組織体系を提唱していた。これがスクラム成立の鍵になった。

 本書は、このようにスクラムが生まれた経緯から掘り起こし、本質に迫る。さらに、スクラムの基本的な活動や楽天などの実践事例も掲載した。アジャイル開発やスクラムの理解を深める上で必読の一冊である。

アジャイル開発とスクラム


アジャイル開発とスクラム
平鍋 健児/野中 郁次郎 著
翔泳社発行
2100円(税込)


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