新興国は今後も成長が期待できる市場だが、安価な製品が要求される市場でもある。これに対して、高価なハイエンドのスマートフォンの市場は主に先進国になる。ところが、アプリケーションプロセッサ(SoC)を見ると、ハイエンドとメインストリームのプロセッサには連続性が見られるが、低コストのプロセッサは完全に別系列となっている。

ハイエンドと低コストを別ラインで用意

 英ARMの「Cortex-A9」は、現在ではメインストリーム用だが、かつてはハイエンド用として導入されている。現在のハイエンドは「Cortex-A15」で、これは2012年末に製品が登場。2013年のハイエンドスマートフォンでは中心となるプロセッサだ。しかし、3年程度で、Cortex-A15もメインストリームになり、64bitモードを持つ「Cortex-A57」がハイエンド用として使われることになると予想される(写真1)。

写真1●ARM Cortex-Aシリーズの現在のラインアップ
写真1●ARM Cortex-Aシリーズの現在のラインアップ
A15がハイエンドで、昨年のハイエンドだったA9はメインストリームに対応する。低コスト製品向けには、Cortex-A5またはA7がある。さらに64bitモードを持つA57/53も現在開発中。
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 これに対して低コストなプロセッサとしては当初から低コスト向けの「Cortex-A5」が現在広く使われ始めており、その後継として「Cortex-A7」を搭載したSoCも発表されている。

 もちろん、メインストリームクラスで使われていたプロセッサも、時間がたてばコストが下がり、低コストのスマートフォンに利用できないわけではない。タイミングによってはその可能性もあるだろう。ただ、Cortex-A9の前世代に当たるCortex-A8は、既に設計が古く、後から出た低コスト向けのCortex-A5やCortex-A7に比べて特に性能が高いわけでもなければ消費電力が低いわけでもない。しかも、プロセッサによってりターゲットにした製造プロセスが違うため、必ずしもコスト的にも有利にはならない。

 その理由の1つには、ハイエンドのプロセッサコアには、Out-of-Order(OoO)実行などの複雑な機構が入り、回路が複雑になったためにダイサイズが大きくなってきたことがある。また、こうした理由により、大きく消費電力を削減することが困難になってきた。