「地頭」という言葉を世に広め、『地頭力を鍛える』や『会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論』などの著者でもあるビジネスコンサルタントの細谷功氏からのメッセージだ。仕事のあり方に関しての考え方そのものの変革が求められる現在、「『無知』と『未熟』を武器にする」という細谷氏のメッセージは新入社員のみならず、新しいことを始めようとするすべての方にとって心強いメッセージになるのではないだろうか。(編集部)


 IT業界へ入られた新入社員の皆さん、新しい世界へのご出発おめでとうございます。新たにビジネスの世界で仕事を始められる皆さんへのメッセージは、「『無知』と『未熟』を武器にして下さい」ということです。

 ビジネスにも仕事にもほとんど経験のない皆さんは、「無知」や「未熟さ」をいかに早く克服して「一人前」になるかを考えているかもしれません。もちろんこれは基本的に間違ってはいないのですが、むしろ同時にそれらが圧倒的な「強み」であることも認識して欲しいのです。

 一つの時代を築いた知識や経験は次の時代にはむしろマイナスに働くことがあります。変動が速く劇的に起こっているIT業界では特にその傾向があると言ってよいでしょう。新しいパラダイム(基本的な価値観やものの考え方)が必要となる時代には、それまで培ってきた経験や知識が「資産」から「負債」に変わることがあります。つまり職場の先輩達に比べて皆さんはその「負債」を負っていない分、身軽に次の世界に入っていけるという点で有利であるとも言えるのです。

 いくつか例を挙げましょう。「クラウドコンピューティング」やXaaS(** as a Service)というのは、単に技術の問題ではなく、企業におけるICT、ひいては仕事のあり方に関しての基本的な考え方そのものの変革を求められます。例えば「『作る』から『使う』へ」とか、「自社のみの閉じたシステムから外部に開いたシステムへ」といったことです。