開発作業の生産性と同じように、運用作業の生産性も把握したい。そんなニーズは高いだろう。しかし、これを実践している現場は少ないのではないか。その理由は、作業項目をどのように整理するか、どのように定量化するかといった点が大きな壁になるからである。

 この難題に挑んだのが、リクルートグループのシステム運用を手掛けるリクルートテクノロジーズだ。同社の水野氏らは、3年がかりで見えにくかった運用作業を約70項目に整理・ポイント化。その上でトータル作業時間から生産性を把握し、適切な人員配置や、生産性低下の原因究明などにつなげている(図1)。

図1●見えにくい運用作業を可視化する
図1●見えにくい運用作業を可視化する
リクルートテクノロジーズの水野一郎氏らは、見えにくかった運用作業を約70項目に整理・ポイント化し、トータル作業時間から生産性を把握。適切な人員配置や、生産性低下の原因究明などにつなげている
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すぐに終わる作業は管理対象外

 利用部門からの作業依頼は、1カ月当たり約1000件あった。このうち700件は、新規ユーザーID発行など、すぐに終わる定型作業である。実は水野氏らは、これらの作業を管理対象から外した。「すぐに終わる作業は時間や生産性ではなく、件数を見れば管理できる。これらを含めて管理すると、計測件数が多くオーバーヘッドが大きい」(水野氏)からだ。

 捉えるべきは、見えにくかった残り300件の非定型作業だ。運用担当者は約60人、このうち非定型作業に当たっている担当者は30人である。このチームの生産性を把握することを水野氏らは目標とした。

 まず取り組んだのは、非定型作業の整理である。これは図に示すように約70種類設定した。さらに、利用部門からの作業依頼は、この項目から選んでもらうようにし、非定型作業を実質的に約70項目に絞り込んだ。

 苦労したのはここからだ。各作業項目について、ポイントを定めた。担当者による作業のブレが小さいと思われる作業を「1.0」とし、それを基準に各項目を相対評価してポイント化。それを「ラフテルワークポイント(RWP)」とした(ラフテルは同社のシステム基盤の名称)。

 ところが実際に適用してみると、なかなか精度が上がらなかった。同じポイント数にもかかわらず、作業時間に大きな開きがある。担当者のスキル差が原因だと考えたが、ポイントの精度の問題だった。

 これは半年から1年をかけて、ポイントを地道に見直して精度を高めるしかなかった。「ポイントの設定は非常に時間がかかった。最も苦労した」と水野氏は振り返る。

 2013年、構想から3年を経て、ポイントの精度も安定し、RWPが運用作業の生産性管理に使えるようになってきた。チームや作業ごとの生産性を前月の値と比較することで、生産性の良しあしや、負荷、体制の不備などをつかめるようになった。加えて経営層や利用部門に対しても、適正な人員であることを根拠を示して説明できるようになった。