2013年4月1日、無料通話/メッセージアプリ「LINE」の運営会社であるNHN Japanが会社分割をする形で、LINE株式会社が発足した。2011年6月に公開を始めたLINEは、そこから半年で1000万人のユーザーを集め、そのあとも勢いは衰えていない。ユーザー数は2012年7月に5000万を、そして今年1月には1億を超え、今もその規模を拡大し続けているLINE。今回、サービス名を社名に据えたことで、まさに看板プロダクトとして国内外での事業展開を加速していくことだろう。

 ここからが本題なのだが、先日海外の 「We Are Social」というソーシャルメディアエージェンシーのシンガポールオフィスが興味深い調査結果を発表していた。アジアにおけるソーシャルメディアの「アクティブユーザーに関する調査(The State of Social in Asia)」だ。

 この調査ではアジアの国や地域ごとに、最大規模のソーシャルネットワークサービスとそのアクティブなユーザー数をまとめている。日本はLINEが最大のサービスで、アクティブなユーザー規模は3600万人に達しているという。この値はLINEが公表した2013年1月のデータをもとに、We Are Socialが推計したもののようだ。

 日本以外では、例えば中国で最もユーザー規模が大きなソーシャルネットワークサービスは「QZone」でその数は5億9800万人、韓国では「カカオトーク」が最大で1900万人となっている。そのほかの国や地域は全て「Facebook」が、ソーシャルネットワークサービスでは最大規模となっている。

 調査では国や地域のソーシャルサービスのユーザーが、総人口に対してどの程度の割合を占めているかも合わせて公開している。それによるとアジア全体では、ソーシャルメディアのアクティブなユーザーは23%となるらしい。

 国や地域ごとでは、日本はLINEの数字がベースとなっており28%だった。最も高い数字だったのが台湾のFacebookユーザーで56%に上り、以下はブルネイ、香港、シンガポールのFacebookユーザーが続いた(実際、台湾や香港、シンガポールでは、Facebookが非常に広く浸透していることは、筆者も業務の中で常々感じている)。

 日本の28%という値は、あくまでLINEが公表したデータをもとに、調査側が推計したものにすぎない。これをもって「日本のソーシャルメディアのアクティブなユーザー規模」とするのは乱暴すぎる。そうはいっても、こうした規模を把握しておくことは決して無駄ではない。

 「ソーシャルメディアが広く普及している」、「みんながソーシャルメディアを使っている」、「ソーシャルメディアを使わないと時代に乗り遅れる」――。そういったフレーズを、この何年かの間に数多く耳にしてきた。

 実際、このフレーズに呼応するかのように、企業がビジネス活動にソーシャルメディアを組み込み、利活用するようになって久しい。そして私たちは、こういったフレーズを既に当たり前の現象であるかのように感じ、ソーシャルメディアが使われることが前提であるかのような思考で、マーケティングやコミュニケーション活動を展開しようとしている。それは本当に正しいことなのだろうか?

 今回まとめられた数字を踏まえ、自分たちの戦略や施策、ターゲットとなるユーザーをきちんと考えたうえで、ソーシャルメディアを自分たちのビジネスにどのような形で組み込んでいくかを考える必要がある。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
デジタル ストラテジスト
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後広報代理店のリードデジタルストラテジストおよびアパレルブランドにおいて日本・韓国のデジタルマーケティングを統括。現在に至る。