「運用」と「保守」って何が違うの?

(イラスト・アニメーション:岸本 ムサシ)

  今回の回答者:
日本UNIXユーザ会
副会長
波田野 裕一

 「運用」は、完成したシステムやサービスを稼働させるために必要な日々の業務のことです。広い範囲を指す言葉ですので、具体的にどんな業務が「運用」に当たるかは、企業やサービスによって異なります。とはいえ、バックアップ、監視、バッチ処理など、特別な出来事がなくても日々実行する業務は「運用」と呼ばれるのが一般的です。

 一方、「保守」はしばしば「運用」に含まれる概念です。ただし、システムの不具合修正など、「予測できない出来事」に対応する業務を指して特に「保守」と呼ぶことが多いようです。機器交換などハードウエアに関する作業も、主に「保守」になります。

 しかし現場では、これらの業務がすっきりと分けられていないのが実情です。企業によっては「運用」部門が「保守」を兼ねていたり、社内に「保守」部門がなくてハードウエアベンダーなどに任せていたりします。また、ソフトウエアのバグ修正は広義の「保守」ですが、サービスやシステムの要件を決めてプログラミングする「設計・開発」部門が担当しているケースもあります。このように「運用」や「保守」の定義は厳密なものではありません。

 そのため、「運用」の業務内容を整理しきれていない企業も多いのです。こうした環境では、様々な業務が随時「運用」に追加されてしまいがちです。「この部分は運用手順書に書いていないけど、よしなに」といった具合に、システム側で不足しているところを、現場の努力で何とかしてほしいという要望が出てきます。いわゆる「運用でカバー」という状況です。

 「運用でカバー」する領域が増えると、融通は利くものの、現場には負荷がかかります。そのため、しっかりした手順書を作っておくこと、また可能な範囲で作業を自動化しておくことがとても重要です。最近では手順書を効率よく作れるツールが登場しています。「運用」か「保守」かの区別よりも、“すべきこと”の手順を明確にすることが大切です。