大手通信事業者が相次いで、中小企業向けのIT活用支援サービスを拡充している()。通信以外の事業拡大や、販売が伸び悩む光回線事業の強化などが狙いだ。

表●今春発表された主な中小企業向けITサービス
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 KDDIは4月から、これまで東京と大阪、名古屋地域を中心に提供してきた「KDDIまとめてオフィス」サービスを全国展開する。サービス提供を担う同名の子会社が四つの地域会社を設立し、営業体制を強化した。

 提供するのは、IT機器や通信回線の導入に加え、光熱費などのコスト削減、クラウドを利用した文書管理などを一括して支援するサービスだ。KDDI執行役員の東海林崇ソリューション事業本部長は「中小企業にはIT専任の担当者がいない。まとめて(社外の)誰かに依頼したいという声が強まってきた」と説明する。2012年度の売上高は約50億円だが、2015年度に500億円に引き上げる。通信以外の事業で売り上げ増を達成する計画だ。

 NTT東日本は、中小企業のIT環境整備と運用を支援する「オフィスまるごとサポート」サービスを強化した。日本マイクロソフト(MS)、デルと提携。3月5日から、同サービスをNTT東の光回線やMSのOffice 365などと組み合わせ、デル製のPCに組み込んで提供している。

 「ワンストップでICT機器のサポートを任せてもらいたい」とNTT東の山村雅之社長は力を込める。PCの稼働状況などをNTT東のサポート担当者が遠隔で把握し、問題がある場合は電話などを通じて素早く解決する。料金は月額3780円(PC3台)からで、別途回線費用などが必要になる。

 NTT東の狙いは、頭打ちが見えつつある光回線の拡販だ。PCの導入サポートが商談の切り口になると見る。契約数は3月末時点で約3万件だが、「今後4~5年で主力商品に育て、100万契約を目指したい」と山村社長は話す。

 中小企業のIT化を商機と見る企業は多い。ソフトバンクBBは3月から、Office 365の導入支援サービスを開始。NECも5月から、パートナー企業の複数サービスを共通IDで利用できる「N-town」サービスを開始する。

 中小企業は大企業と比較して値下げ要求が厳しくなく、一度契約したら長期間使い続ける傾向がある。「利益率が高い」(KDDIの東海林執行役員)市場を開拓する動きが活発化し始めた。