売上高3000億円規模の国内ITサービス準大手によるASEAN(東南アジア諸国連合)進出が加速している(表1)。

表1●国内ITサービス準大手によるASEAN拠点拡大に向けた主な動き
表1●国内ITサービス準大手によるASEAN拠点拡大に向けた主な動き
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 2013年3月には伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が米国IT大手のシンガポールとマレーシアの子会社を買収。4月には日立システムズがマレーシアで合弁会社の営業を、野村総合研究所(NRI)がタイで現地法人の営業を、それぞれ開始した。ITホールディングス傘下のアグレックスは7月、ベトナムのIT大手と合弁会社を設立し営業を始める。

 合弁や買収による参入が多いのは、各社がスピードを重視している表れだ。日立システムズの齋藤眞人執行役員は「ASEAN市場の早期攻略には買収などの荒療治が不可欠」と話す。各社はASEAN拠点を活用して、日系企業向け事業と現地向け事業の二兎を追う計画だ。例えばアグレックスがベトナムのFTPソフトウェアと共同設立する合弁会社は日本向けにBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供するが、将来的にベトナムなどのASEAN諸国に展開していく。

 CTCが伊藤忠商事と共同で買収したのは、米CSC(コンピュータ・サイエンシズ)のシンガポール子会社とマレーシア子会社。2社合わせて700人規模で、金融向けITサービスを強みとする。両社にクラウドや通信関連の技術移転を進め、幅広い業種から案件の獲得を目指す。

 日立システムズが組んだのは、マレーシアのITベンダーであるサンウェイテクノロジーだ。サンウェイの子会社を母体に、日立システムズが51%を出資する形で、社員数約170人の合弁会社を設立した。新会社はマレーシアのほか4カ国に拠点を持つ。サンウェイの強みであるPLM(プロダクトライフサイクル管理)ソフトに加え、日立システムズが得意とするクラウドサービスを売り込む。

 NRIが設立したタイの拠点は、ASEANでは4番目となる。同社は香港拠点を中心にクラウド型ERP(統合基幹業務システム)などを提供している。製造業が多く進出するタイに現地法人を構え、日系企業やグローバル企業向けにITサービスを直接提供する。

 日立製作所やNTTデータといった国内大手は既に、ASEANでの事業拡大に向けて買収などを進めている。準大手はそれに続く格好だ。ASEANのIT市場は2016年に約755億ドル(約7兆1600億円)に達する見込み(IDC Japan調べ)。成長市場への進出は今後も続きそうだ。