これからDevOpsに取り組む場合、どのような進め方をすればよいのか。今回は、現場への取材を通じて浮かび上がった効果的な四つのステップを紹介する。

ステップ1 技術交流(互いの常識を知る)

ステップ1 技術交流(互いの常識を知る)

 DevOpsの基本は、Dev(開発)とOps(運用)が連携し、協力し合うことだ。その第1歩としては、手軽に始められる「技術交流」がうってつけだ。

 「このシステムは本番環境で動かすことができません」。クラウドサービス事業者のパイプドビッツで開発チームを率いる鈴木信裕氏(開発本部 基盤開発部 部長)は、開発チームが作ったシステムを運用チームに引き渡そうとした際、相手からこう言われ拒絶されたことが何度かあるという。

 一つのケースを紹介しよう。パイプドビッツでは開発チームが企画を立ててシステムを開発している。あるとき、複数システムで共用するメール配信システムを作ることにした。それまではクラウドサービスごとにメール機能を作っていたので、よく似た機能がいくつも存在していた。開発チームはこれでは非効率だと考え、「共用メール配信システム」を作ることにした。

 複数サービスで共用するとなると、メール配信システムには高い性能が必要になる。開発を担当したA氏は高速配信技術を駆使し、短時間で大量配信できるメール配信システムを作り上げた。しかし、そのシステムはすぐには本番環境で動くことはなかった。

 キャリアのメールサーバーは、同じIPアドレスから短時間に大量のメールが送られてくると、迷惑メールの配信サーバーと認識して受信を拒否する。運用チームにとっては常識といえる知識で、「このキャリアのサーバー宛てのメールなら、これぐらいのペースに抑えないといけない」といったノウハウを蓄えていた。一度に大量のメールを配信しなければならない場合でも、配信間隔を調整する工夫で乗り切った経験があった。

 開発チームのA氏はそうしたことを知らず、配信間隔の調整機能を持たないメール配信システムを作った。運用チームは「これでは受け入れられない」と拒否せざるを得なかった。