今回は、若手を育てる上司側の視点で話をします。

 「若手に伸びてほしい」と普段から言っている上司。ところが若手が商談でつまずくと、自らが出向いてまとめ上げ、若手を叱り飛ばした。

 会社によくある光景です。上司は「自分で商談をまとめて実績を担保し、そのうえで若手に伸びてほしかった」と言うでしょう。

 しかし、本当に伸びてほしいというなら、最後まで商談を任せるはず。周囲から見れば「自分の実績を優先した」と取られても仕方ありません。

 自分が上司として、叱るタイプか、褒めるタイプかを考える前に、仕事において自分が大切か、部下が大切かを考えているでしょうか。仕事ですから、当然成果は大切。しかし指導においては、成長も期待したいところです。この区別をしているでしょうか。

図●部下と上司、成長と成果の2軸で考え、優先順位をつける
図●部下と上司、成長と成果の2軸で考え、優先順位をつける
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 にあるように、スタイルは部下と自分(上司)、成長と成果の4つが重要なのです。

 業績不振なら、何としても自分が先頭に立って、成果を挙げなくてはいけません。しかし長期的な成功を目指すなら、部下の成長は欠かせない。このように、目標と時間を整理すると、指導の在り方が自然と決まってきます。

 ラグビーであれば、今のチームで2年後に優勝を目指している場合、最初の1年は「成長」を優先できます。例えばシーズンの初めであれば、選手の成長や成果より、指導者である自分の成長を優先すると決めるのもよいでしょう。その期間中は叱る、もしくは褒めるといった自分のスタイルをブラッシュアップするのです。

 「この選手にはどんな指導法が向くのか」を色々と試してみる。そのうえで叱り続けて反発を食らっても、徐々にそれを糧にできるようになるか、もしくは褒める方針に切り替えて個性を伸ばすのがいいかを見定めるわけです。こうなると、指導法が固まります。

 リーダーになると「この部下にはこう接するべき」ということに目が向きがちになりますが、まず「自分はどんな人間なのか」というところに戻らなければ。苦手なことを無理にやっても、地に足は着かないのです。