クラウドファーストには大きく二つのパターンがある。一つは「ボトムアップ派」。もう一つは「トップダウン派」だ。前回のボトムアップ派に続いて、今回は、経営陣が経営目標を達成するために、クラウドファーストを決断したトップダウン派の事例を見る。
ベンダーに検証を求める
トップダウン派の経営者は、なぜクラウドファーストを選んだのか。ミサワホームとTOTOは財務的な理由から、日本瓦斯、JPメディアダイレクト、コクヨの3社は、社長が独自の狙いを込めて選択した。それぞれの事情を見ていこう。
ミサワホームは2004年に産業再生機構の支援を受けるなど、2000年代は経営的に厳しい期間が続いた。そのため「Y2K対策以降、IT投資は凍結状態にあった」(宮本眞一情報システム部長)。
現在同社では、基幹系システムの一斉更新時期を迎えている。「これに対応するためには、クラウドを活用するしかない」(同)と考え、2011年にシステムのクラウドへの移行を決めた。
既存の自社DCは、2014年までに廃止する。まず2012年1月にグループウエアをGoogle Appsに移行。今後、業務システムは、パッケージを採用すると共に、ITインフラをAWSに移行する。
人事システムはワークスアプリケーションズの「COMPANY」を、会計システムは NTTデータビズインテグラルの「ビズインテグラル」を、顧客管理はソフトブレーンの「eセールスマネージャー」を採用する。
パッケージをAWS上で稼働するという方針に対して、ベンダーの反応は分かれた。ワークスアプリケーションズは、2011年3月にCOMPANYをAWSに対応させており、利用に問題はなかった。
問題となったのは他のパッケージだ。「当初は『AWSで稼働できない』というベンダーがほとんどだった」(宮本情報システム部長)。しかし詳しく話を聞いてみると、実際にはベンダーは、AWSでの稼働検証すらしていなかった(図1)。「AWSで検証してほしい」と粘り強く交渉したところ、ベンダーはAWSでの稼働を認めたという。