米Red Hat社は2013年1~2月、業務システム向けLinuxディストリビューションの新版「Red Hat Enterprise Linux 6.4」「同 5.9」をリリースした。いずれも、Windows Serverで動く仮想化ソフト「Hyper-V」上で、ゲストOSとして利用する際の動作効率が向上するドライバが組み込まれた。

 米Red Hat社は2013年1月、Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 」の5系列の新版「RHEL 5.9」をリリースした。また2月には、6系列の新版である「RHEL 6.4」もリリースした。

 RHELは、主に業務システムのサーバーOSとして広く使われている。RHEL 5とRHEL 6では、ベースとなるLinuxカーネルのバージョンが異なる。RHEL 5はカーネル2.6.18、RHEL 6はカーネル2.6.32~2.6.34が基になっている。ただし、新版カーネルに追加された機能の一部が取り込まれて(バックポートされて)いる。前版 のRHEL 4を含めて、各版の概要を表1にまとめた。

表1●RHEL4~6の概要
表1●RHEL4~6の概要
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 レッドハットによると、RHEL 6の特徴は「RHEL 5に比べて拡張性が大きく、早期に枯れたこと」。早期に枯れたとは、初版リリース以降にアーキテクチャーや機構面に大きな変更がなく、コードが安定していることを意味する。RHEL 5の場合は、当初は仮想化ソフトにXenを採用していたが、RHEL 5.4からKVM(Kernel-based Virtual Machine) もサポートするように改めるなど、マイナーバージョンアップ時に大きな変更が加えられた。

 実際、RHEL 6ではこれまでのマイナーバージョンアップで大きな機能追加はなく、もっぱら新たなハードウエアに対応するためのデバイスドライバの追加や、セキュリティ アップデートの実施にとどまっている。なおRHEL 5も、5.5版以降では大きな機能追加や変更は行われていない。

10年にわたってサポート

 RHEL 6.4および同5.9が開発されたのも、最近登場したハードウエアへの対応やセキュリティアップデートが主目的である。こうしたマイナーバージョンアップが繰り返されるのは、RHELのライフサイクルが長いことによる。

 一般に、業務システムは1度構築されると、細かな保守開発を伴いながら、数年以上にわたって利用される。10年以上使われることも珍しくはない。

 Red Hat社は長期間使い続ける企業ユーザーからの要望を受け、RHEL 4以前は7年だったサポートサービスの提供期間(運用フェーズ)を、RHEL 5やRHEL 6については10年としている。2007年3月に初版がリリースされたRHEL 5の場合は2017年3月まで、2010年11月に初版がリリースされたRHEL 6の場合は2020年11月までメンテナンスされる(図1)。

図1●RHELのライフサイクル
図1●RHELのライフサイクル
RHEL 4以前は7年だった運用フェーズ(サポートサービスの提供期間)が、RHEL 5以降は10年に延長された。RHEL 6の場合、2013年2月時点では運用フェーズが7年半残っている。なお、RHEL 3や同4では、運用フェーズ後に3年の延長サポートサービスが用意された。
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