日本たばこ産業(JT)の新貝康司副社長とITリサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長がグローバル経営について語る対談の後編をお届けする(前編は『日本の「謙虚さ、品質重視、長期視点」は世界に通じる』を参照)。
2007年にJTは英国のたばこ会社ギャラハー・グループを買収、短期間で経営統合を終えた。秘訣の1つは綿密な計画を立て、M&A(買収・合併)を「見える化」したこと。「統合の計画、遂行、ビジネスプロセスやITの統合、すべてを主体的にこなさないといけません」と新貝副社長は語る。
(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=ITpro編集長)
日高:JTは2007年に英国のたばこ会社ギャラハー・グループを買収しました。総額約2兆円、日本企業による過去最大の企業買収という規模もさることながら、わずか100日間で統合計画を策定し、後はそれに基づいて、短期間でギャラハーをJTI(Japan Tobacco International、JTのグローバル事業を統括するグループ企業)に統合した点が記憶に残っています。親会社のJTは日本、JTIは米国、ギャラハーは英国とそれぞれ出自が違うにもかかわらず、なぜここまで素早い統合ができたのでしょうか。
新貝:ベースにあったのは反省です。米RJRナビスコの米国外のたばこ事業部門であったRJRインターナショナルを1999年に買収し、JTIを作ったわけですけれども、統合計画を作るのに8カ月くらいかかった。グローバルな運営をしていた企業を買ったわけですから、8カ月でもよくできた方ではないかと当時は思っていたのです。
ところが人間の気持ちというのは難しいもので、こういう買収が起きると、買われた企業の人たちは自分の将来がどうなるか、もやがかかったような気分になるわけです。もやがかかると仕事が手に付かなくなりますよね。自分はこの会社に残れるのか、残れたとしても今のポジションを続けられるのか、待遇はどうなるとか、色々なことが気になってくる。社員も役員もみんなそうなる。