昨日の前編からの続き。

写真●アスクルの吉岡晃取締役BtoCカンパニーCOO。ヤフーからの出向者との混成チームを率い、そろいのシャツを着て仕事をすることもあった。シャツの背中には「爆速」の文字が躍る(写真:北山 宏一)
写真●アスクルの吉岡晃取締役BtoCカンパニーCOO。ヤフーからの出向者との混成チームを率い、そろいのシャツを着て仕事をすることもあった。シャツの背中には「爆速」の文字が躍る(写真:北山 宏一)

 アスクルでロハコを指揮する吉岡晃取締役BtoCカンパニーCOO(最高執行責任者)が取材中、「習慣というのは本当に怖いものですね」と、しみじみと語る瞬間があった(写真)。

 アスクル社員の体に染みついた習慣。それは「カタログの発行サイクル」に沿って物事を考えてしまうことである。

 既に、アスクルの売り上げの7割近くがインターネット経由になってきているとはいえ、アスクルの通販サービスに今も欠かせないのが、年2回発行する分厚いカタログである。ネットで注文を入れる人でも、カタログ片手に商品を選んでいることが多く、アスクルにとってカタログは必須アイテムだ。

 そのカタログ、発行頻度は半年に一度である。つまり、半年に一度の更新サイクルが、アスクルではこれまで“主流”だった。

 ところが、スマホファーストを掲げてロハコをオープンさせると、「1日3回のレビューが当たり前になった。スマホのサービスは、毎日サイトに手を入れていかなければならない。そのことをやってみて痛感した」(吉岡氏)。

 例えば、ロハコのサイトに消費者が“来店”したものの、何もアクションを起こさずに、そのまま帰ってしまっている人が多いと分かった場合。要はコンバージョンレートが悪く、購買への誘導が弱い。するとアスクルでは「朝に対応を検討し始め、夕方には画面やコンテンツの変更を終えていることがある」(同)。

 これがスマホファーストで求められるスピード感だ。これまでのカタログ主体のアスクルでは、あり得ない速さである。カタログは一度印刷して配布してしまえば、価格も含めて有効期間内に変更することが原則できない。

 一方、スマホファーストでサービスを提供するということは、スマホを日常的に利用する消費者の生活サイクルに深く入り込むことを意味する。

 スマホ版ロハコでいえば、消費者の利用時間帯は昼休みに、夕方の帰宅時間、そして寝る前の深夜と、1日に大きく3回、ピークが来ることが分かってきた。言ってみれば、消費者にとって“暇”になる時間だ。この瞬間を逃すわけにはいかないし、ここで不快な思いをさせるわけにもいかない。