日本たばこ産業(JT)の新貝康司副社長とITリサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長がグローバル経営について語り合った。
専売公社時代の1968年に立てた長期経営計画で「将来を考えると国際化しかない」と明記。1999年に米RJRナビスコから米国を除く全世界のたばこ事業を買収、グローバル事業の統括会社をジュネーブに置き、多国籍の経営陣が舵取りしてきた歴史がある。
そうした中、日本の「謙虚さ、品質重視、長期視点」をグローバル事業でも生かしていったという。前編ではJTが学んだグローバル事業の勘所を紹介する。
(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=ITpro編集長)
日高:日本企業の課題としてグローバル化が挙げられてからずいぶんたちますが、依然として解決できていません。経営者の方々にお目にかかると「今までグローバル化を全く考えてこなかった事業まで含めて、すべての事業について考える必要がある」とおっしゃっています。
新貝さんはグローバル事業を統括するグループ企業「JTI(Japan Tobacco International)」のナンバーツーといえる副CEO(最高経営責任者)を務められ、2007年には英国のたばこ会社であったギャラハー・グループ買収の指揮を執られた。グローバル企業の運営、M&A(買収・合併)、経営統合とIT(情報技術)統合といった点で、新貝さんから学ぶことは沢山あると思っています。
新貝:グローバル化について色々な方が取り組んでおられますから、私が何か言うのは僭越(せんえつ)ではないでしょうか。
日高:いえいえ。最初に伺いたいのは、JTが持っているに違いない文化的な遺伝子、DNAのようなものについてです。民営化される前は日本専売公社という国内だけを向いた、基本的には予算ありきで物事が動く組織だったのに、今や日本の企業の中でグローバル化のトップランナーになるところまで来られた。何か核になるものがないと、こうしたことはできないと思うわけです。新貝さんから見て、どういうものがあったのでしょうか。
「国際化しかない」と1968年に決意
新貝:順を追ってお話した方がいいと思いますので、40年ほど昔に戻ります。1968年のことですけれども、我々の先輩たちが長期経営計画を作りました。昭和43年でしたので「43長計」と呼んでいます。
43長計の中で自分たちの将来を考えると、国際化しかないと明確に言っています。国内だけにとどまっていれば、自分たちの市場はいずれ浸食されるだけだという強い危機意識が当時からあったのです。
我々が扱っている商材は世界中でビジネスができる、勝負ができる、そういうものでした。国際化にしか自分たちの未来はない、この実現のために自分たちはどういう会社にならないといけないか。それを目指して制度も含めて変えていく。こういった思いが43長計に込められています。なかなか大変なことが書いてありますよ、「年功序列を廃止」とか。
それぐらいやらないと国際化できないという強い思いを私達の大先輩が抱いた。後に続いた私達の先輩、そして私達がその思いと危機意識を、その時代、その時代で共有し続けた。これが大きかったと思います。
日高:1968年に年功序列廃止と書く、そこまでの危機感を抱いたのはなぜでしょうか。