「賢者が描く10年後のインターネット」は今回が最終回。最後の賢者は米グーグルでアクセシビリティを担当するリサーチサイエンティスト、T.Vラマーン氏だ。アクセシビリティとは年齢や身体の条件に関わらずアクセスできる環境を作り出すことを指す。盲目のプログラマーであるラマーン氏は、誰にでも便利で自由になるインターネットの未来図を描いていた。

1年半のつき合いになる盲導犬のTilden(ティルディン)と。バークレーにある公園の名前をつけたという。(写真:KOICHIRO HAYASHI、他の写真も同)

アクセシビリティとは、どのような仕事ですか。

 私がグーグルに来たのは8年前。その前は米IBM、さらにその前は米アドビシステムズに在籍していた。コーネル大学を卒業し、アクセシビリティの仕事に就いた。1989年ごろだね。当時、インターネットはあったが、まだ始まったばかりだ。しかし、その時でも多くの情報がオンラインにあった。

 盲目でインド人だった私が見つけたチャンスがあった。非常に簡単なことに気がついたんだ。それまで、私にとって情報とは紙に置かれた点だったんだよ。それが電子情報ならコンピューターが翻訳して読み上げてくれる。これに気がついた私は、数学に基づいて研究を始めた。

 この20年間、情報をどのように創造すれば、消費する形に変えられるか、情報を入手した時にどのように画期的な形で提供できるかを考えてきた。コンテキスト(文脈)を見てきたんだ。皆さんが情報を入手するとき、それは地下鉄で携帯電話を見ているかもしれない。自動車を運転中に情報を入手したいと考えるかもしれない。そういう場面ごとに消費しやすい形とはどういうものなのだろうか。これを考えると、盲目の人に便利な情報の形は、様々な人にとっても便利な姿なんだ。