「賢者が描く10年後のインターネット」の6回目は、米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEO(最高経営責任者)だ。企業のITシステムに大変革をもたらした辣腕経営者は、SNSの普及で企業と顧客の関係は様変わりすると断言する。顧客と密接につながることが、強い企業になる条件だ。

インターネットでは今後、どのような変化が起きると考えますか。

(写真:丸毛透)

 IT(情報技術)の領域では4つの重要なトレンドが起きています。これは何度も指摘していることですが、1つ目のトレンドはクラウドコンピューティングです。クラウドは今後も、ITの世界を大きく変えていくと思います。2つ目は、次世代のデバイスがどんどん生まれているということ。指で触って操作するタッチベースのシステムが圧倒的な存在になり、人々は従来のキーボードやマウスから解放されつつあります。

 3つ目はソーシャルです。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で人間同士がつながることが、極めて大きな影響力を持つようになっています。「フェイスブック」や「ツイッター」などのSNSが起こしている変化を思い浮かべてください。そして4つ目のトレンドは私が“ローカルの能力”と呼んでいるものです。すべてのアプリケーションで今後、地図情報など地域に関する情報がカギを握るようになるはずです。

 この「クラウド」「タッチ」「ソーシャル」「ローカル」の4つが融合する中で、次世代のネットの世界が決まっていきます。10年先に現在の米グーグルのような存在になろうとするなら、この4つの要素を実現できるかどうかがポイントになるはずです。

 例えば日本で人気の高いスマートフォン向け無料通話アプリの「LINE(ライン)」は、4つの要素をうまく取り入れることで消費者の人気を集めています。とても操作しやすく、手軽に友人とつながることができます。LINEはネットの将来像の1つを指し示していると思います。